馬 青先生

コンピュータで言葉を!(=「自然言語処理」)
コンピュータは人間の言葉をどこまで理解できるのか

馬研究室発 2006年の「流行語予報」は当たるか?

先生の研究では、自然言語処理の基礎技術からインターネットへの応用など、幅広い研究をされているようですが、ゼミ生はどのような研究をしているのですか。

一例をあげますと、毎年年末にその年の流行語大賞がありますが、それに先駆けて、コンピュータで予測して「流行語予報」を出します。2005年は、「郵政民営化」が第1位で、次いで「刺客」「想定の範囲内」・・・といった言葉が選ばれました。
学生が「流行語を予測するプログラム」を作って、マスコミや新聞などによく出てくる言葉をもとに予測します。その結果と実際の流行語大賞を比較したところ、実際、当たった言葉もありましたね。この予測は、数年前からやっているのですが、学会で発表したこともあります。
言葉と関連することで、学生に興味がありそうなことをいろいろやってもらっています。私の研究室は、「言葉」に興味がある学生が多いです。

社会のニーズにつながっている研究。それが、自然言語処理の魅力のすべて。

自然言語処理の魅力はどんなところにあるのですか。

社会的ニーズがあっての研究で、これが必要だろうなということを研究していますので、やっていることが社会とつながっていて、役に立っているという点が魅力です。
例えば、私が研究している「質問応答システム」をWeb公開して、一般の人に使ってもらったら、とても便利ですよね。質問に対して、答えが出て、しかも答えの根拠まで表示してくれるのですから、便利なツールです。
先ほどの話にも出ましたが、“へんかん”は文脈によって、「変換」だったり、「返還」になったり変わってきます。文脈によって自動的に変換したり、訂正したりするシステムも、社会的ニーズがあります。
情報検索では、大手検索サイトがありますが、不要な情報が多いなど不満を持っている人も少なくありません。それだったら、賢い検索エンジンを作ったらもっと便利になり、満足できる人が増える、といったように、身近なところに研究対象はあります。
これからやってみたいことは、自然言語処理での文章評価です。書いた文章が上手いか下手かを判断するものですが、それは語彙が少ないのか、多いのか、言葉が豊かかどうか、文法的に正しいかを統計的に多様な言語データで判断するというシステムです。

私たちの身近にあるものだから。

私たちの身近にあるものだから。

私たちが普段使う「言葉」。
身近なものだからこそ応用範囲も広く、生活に直結した「役立つもの」ができるんですね。
今年の「流行語予想」、果たして当たるのでしょうか!?

前の職場の上司の影響を受け、今の研究に。

先生が自然言語処理の研究を始めたきっかけはどんなことですか。

直接的なきっかけは、私が龍谷大学に着任する前、独立行政法人通信総合研究所(現:情報通信研究機構) の自然言語グループで、種々の機械学習を用いた自然言語処理の研究をしていましたが、その時の上司の影響があります。私はその時分、認知科学の研究をして いましたが、社会のニーズがあっての研究で、世の中の役に立つような、実際的な分野の研究をやってみたいと思い始めていました。ちょうどその時、新しい上 司が来て、その人が言語の研究をしていたので、それから自然言語処理の研究を始めました。

学生でも研究内容を学会発表できるんです

どのような授業を学生に教えていますか。

情報科学分野における基礎知識となる、プログラミングやアルゴリズムを教えています。
プログラミングでは、講義と実習を行っています。講義で解説をし、実習では講義で解説した例題や演習問題のプログラムを実際に計算機上で動かしてみることで、理解を深められるようにしています。
アルゴリズムでは、与えられた問題をコンピュータで解くには、その問題を把握し、どのような手順で解いていけばよいかを考え、その手順にそってプログラムを作成してもらっています。
いずれも、情報科学分野の基礎知識の習得とともに、プログラミング能力、論理的思考能力、アルゴリズムに対する理解力を身につけられるようにしています。
話は少しそれますが、来年(2007年)3月に言語処理の大きな大会が龍谷大学であります。この大会は、毎年行っているものですが、関西の私立大学で開催 するのは龍大が初めてだと思います。その大会には、NTT、富士通、東芝、日立、NECなどの大手企業の研究者も集まるものですが、1週間、毎日討論や発 表、講演が行われ、500人もの人が参加します。
私の研究室の学生は、毎年学外で学会発表をしていますが、来年(2007年)3月の言語処理大会でも発表してもらう予定です。

高校生へのアドバイスをお願いします。

今までやってきたことにこだわらないで、どんどん新しいことを考え出す力、創造力を持ってほしいです。何か新しいことがあれば、入口の前でためらわない で、とりあえずやってみるという姿勢も必要です。研究には、創造力が必要です。私の研究室では、「どういうこと(研究)をやっていくか」、「社会的ニーズ を見通して新しいアイデアを出してやっていく」、といった創造力を大切にしています。高校での勉強は、先々の基本となります。アイデアを持つには、基礎的 なことができていないといけませんので、しっかり勉強してください。