受賞タイトル

各研究の概要

白血球による感染防御モデルの数理的研究

T06M002 渥美善之(森田研究室)

本研究では,Alt-Lauffenburgerによって提案された白血球の動きを表す数理モデルについて研究する. 白血球とバクテリア,誘因物の濃度を変数とした3変数の反応拡散方程式系で表される. モデル方程式では,白血球のみが生存する状態に対応した平衡解が常に存在する. この平衡解の線形化安定性について調べ,平衡解が安定である条件を決めた. さらに数値計算で適当な量のバクテリアは死滅させることができるが大量のバクテリアの侵入に対して防御できないことが判明した.

この現象を数学的に解明するためにモデル方程式を調べた. その結果,安定な平衡解と不安定な平衡解が存在することが分かった. さらにバクテリアが増殖しやすい状況を仮定し,そこに走化性の効果を加えることでバクテリアを死滅させることができ,走化性の効果を検証することができた.

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資源消費型反応拡散系の進行波解について

T06M011 嶌本知美(二宮研究室)

資源とその消費者の関係は経済活動だけでなく自然界にも多く見られる. 生物では伝染病の伝播や被食者・捕食者の関係,物理現象では燃焼問題などの化学反応が挙げられる. それらの反応では,資源はいずれなくなるので最終的には定常状態に収束していくにもかかわらず, その途中にはさまざまな現象を引き起こし,その過程は必ずしも単純ではない. 例えば,バクテリアと養分の関係で見てみると,バクテリアは養分のあるところへとだんだん移動していく. この移動を表現する解として進行波解が現れる. 進行波解とは一定速度cで平行移動する解のことで,資源の密度を u,消費者の密度を v とすると, (u(x-ct),v(x-ct)) の形をした解で,時間に関係なく一定の形をしている. 進行波解はパターン形成にも重要な役割を果たすため,より詳しい情報が必要となる. 本研究では資源消費型反応拡散系を扱い,その進行波解の存在やその挙動を詳しく調べ,その中でコンパクトなサポートをもつ進行波解の構成をおこなった. 資源消費型反応拡散系の非線形項として具体的な関数を与え,進行波解の解の形状を調べる.

まず,進行波解の満たす方程式を導出し,その平衡点を求める. 続いて,それぞれの近傍での軌道の振る舞いを線形化方程式から調べる. しかし線形化固有値問題はそれぞれ固有値0をもつので,線形化方程式だけでは挙動が決定できない. そこで中心多様体の議論を用いる必要がある. まず,大きな正不変領域を構成し,その中に中心多様体を構成する. その軌道は正不変領域の内部から出ることはないので,進行波解の存在が従う. また,その解の挙動から進行波解のヘッドとテールの漸近挙動を調べた.

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ガボール特徴行列に対するフィッシャー重みマップを用いた顔画像からの表情認識

T06M012 下津奉久(高橋研究室)

本研究では,計算機を使って顔画像の表情を認識することを試みました. 例えば,怒った顔の画像を入力した場合には,その顔が怒っていると計算機に正しく識別させることを考えます. 表情認識技術は,笑顔を検知する機能としてデジタルカメラなどでも使われていますが,まだまだ精度向上が望まれています.

一般に,画像から得られる特徴量は,ベクトルとして扱われます. これに行列を掛けると,ベクトルの次元を圧縮し,識別に有効な特徴を取り出すことができます. このとき,行列を構成する列ベクトルは,画像の特徴量を重み付けるものとなっています. 本研究では,画像の特徴量を行列として扱い,識別に有効な特徴を抽出しました. また,特徴抽出の際の重み付けの方法を工夫しました. このように,単にプログラムを作成するだけでなく,線形代数など数学の知識も必要となります.

改良の有効性を検証するために実験を行いました. 実験では,基本6表情(怒り,不快,恐怖,幸福,悲しみ,驚き)に無表情を加えた7クラスの識別を行いました. さらに,歩行者画像と非歩行者画像の2クラスの識別問題に対しても実験しました.

後輩に向けてのメッセージ:

時間を有効に使うために,スケジュールを管理するよう心掛けるとよいかもしれません. 就職活動時にはもちろんですが,急に予定が入ることもあるし,または病気で時間をとられることもあるでしょう. そのためにも,計画を立ててコツコツと研究に取り組んでおくことが大切かと考えます.

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線形化固有値問題の固有関数の解の形状について

T06M013 鈴江央(四ツ谷研究室)

微分方程式の固有値問題は,古典的な問題です.反応拡散方程式に現れる非線形境界値問題に対する線形化固有値問題の固有値の分布,固有関数の形状を知ることは大変重要なことです. しかし,f(u)=sin u などのような典型例の場合においてさえ固有値・固有関数の全容は未知でした.

最近,若狭(早稲田大)・四ツ谷(龍谷大)により非線形境界値問題の任意のn-mode解u(x)ごとに,すべての固有値と固有関数を表示するアルゴリズムを提案し,典型例の場合にそのアルゴリズムがうまく実行できることを示しました. また,柳田(東北大)はj<nの場合一般的なf(u)に対して固有関数はu(x)の零点の近くでピークを持ち,その高さがcos jπzに比例するspikeを持つという興味深い予想を提示しています.

本研究では,柳田予想に興味を持ちf(u)=sin uの場合に,解の形状および極限形状について,数値的に詳細に調べました. ε→0までこめて,固有関数の漸近形状を高精度に近似することは通常の数値計算では困難ですが,若狭・四ツ谷の表示式を数値計算しやすいように,書き直し数値計算を行いました.

後輩に向けてのメッセージ:

どんな些細なことでも,気になることは調べて無駄なことはありません. また,いろんな人と話をすることで意外なところからヒントが得られるかもしれません. 様々なことに果敢に挑戦してみてください.

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カラーヒストグラム間の距離を用いた自然画像と人工画像の分類

T06M019 中村慎一(高橋研究室)

インターネット上の画像を検索する場合、同じキーワードで検索を行った場合でも、写真を探したい場合と、写真ではないイラスト等を探したい場合があると思います。 そのような場合、キーワードの工夫によって、写真とそうでないものを区別して探すのは難しいと考えられます。

本研究では、自然画像(写真)と人工画像(非写真)を、画像のカラーヒストグラムを用いて分類することを目的としました。 自然画像と人工画像を分類できれば、見つけたい画像を探しやすくなると考えたからです。

予め人手で分類された画像を使って機械学習による分類を行う際には、データ間の距離(類似度)を用いると分類性能の向上が見込めます。 カラーヒストグラム間の距離を用いた場合とそうでない場合や、機械学習の手法などを色々と組み合わせて、それぞれを比較できるように実験を行いました。

後輩に向けてのメッセージ:

一度作成して問題なく動作したプログラムは、なかなか修正する気になりません。 けれども、後から修正する必要が出てきたりするので、処理内容が分かりやすいように設計すると良いでしょう。

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Last Modified: Wednesday, 02-Jun-2010 20:04:20 JST