受賞者と題名

各研究の概要

イラストロジックの人間的解法プログラム

奥田将仁

本研究はこれまで先輩方が過去に研究してきたしらみつぶし手法によるイラストロジック解読プログラムのようなものではなく、実際人間が解く時に考える手法を一つずつ細かく分析し、その手法を組み合わせて解読するというものである。イラストロジックは横方向の列と縦方向の列があるが、本研究ではこれらを特に区別せず、列の集合としてパズル全体を解いていくことにしている。手法は 21 個用意し、マス確定手法、対応付け手法、分割手法の 3 種類に分類した。

イラストロジックの解法としては、手法を並べた配列を用意し、最初の手法から順に各列に適用し、パズルに変化がなければ次の手法に進む。ある手法をある列に適用して一つでもマスが変化すれば、もう一度最初の手法に戻って適用する。パズルに変化がなくなればプログラムを終了するという流れになっている。

問題の難易度は Lv1~Lv4 を用意した。人間が考えるであろう最も簡単な手法から易しい順に手法を並べた配列 1、マス確定手法のみを並べた配列 2、配列 1 で全く効果がなかった手法を取り除いた配列 3 の 3 種類を使って、確定することのできたマスの数の割合(確定率)と完答することのできた問題数の割合(完答率)をそれぞれ出した。

この結果対応付け手法や分割手法が不可欠であること、また、更に他の手法を加えたり並びを変えたりすることでより効率がよくなるであろうということがわかった。

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コンピュータによる構造色の表現

秋月孝善

構造色とはシャボン玉や貝殻、CDの裏面などに見られるなどに見られる色である。光の当たる角度や、見る角度によって赤っぽく見えたり、青っぽく見えたりする。これは、光の波長や光の当たる物体のナノメートル単位の構造により生じるものである。

シャボン玉は光の波長ほどの厚さの膜でできている。そのような膜を薄膜という。シャボン玉に生じる構造色は薄膜干渉によるものである。薄膜干渉とはシャボン玉のような薄い膜でできているものに光が当たると、膜の表面で反射する光と膜の下の面で反射した光とが干渉する。薄膜干渉による光の強さは光の道のりの差に屈折率をかけた光路差を考慮しなければならない。シャボン玉の反射光をコンピュータグラフィックスで表現するために、フォンシェーディングを用いる。フォンシェーディングは光がよくあたる部分を明るく、あまりあたらない部分の影を光の当たる角度と視点より計算する方法である。フォンシェーディングで計算された反射光の強さと、干渉で現れる光の強さを組み合わせることにより、リアルなシャボン玉が表現できる。

実験の結果より、干渉による構造色の生じ方は光路差によって大きく左右されることがわかる。人間の目では確認することができない数ナノメートルの差で色付き方は大きく変わる。しかし、さらに、目に届く光の強さの計算に反射光と視線との角度を考慮することにより、普段見る現実に近い色が表現できた。

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塩水振動子の振動形態と相関関係

松下裕伸

身近にある様々なリズム現象の中から, 本研究のテーマとして塩水振動子を選んだ. 適当な大きさの水槽に水を張り, 底に小さな穴をあけた塩水の入ったカップを固定する. 水面がほぼ同じくらいになるように静置させると, 小さな穴を塩水が下向きに流れる状態と真水が上向きに流れる状態を交互に繰り返し, 位相が180°ズレた逆位相モードとなって振動する現象が起きる. これを塩水振動子と呼ぶ. 塩水振動子の特徴としては, 上下運動をしているカップに摂動を与えてリズムを乱しても, 時間が経過するにつれて元のリズムに戻る. これをリミットサイクル振動と呼ぶ.

塩水振動子が2個の時の数値シミュレーションで現れる対称性の高い振動形態は, 停止状態, 同位相状態, 逆位相状態の3パターンが考えられる. また, 塩水振動子が3個の時の対称性の高い振動形態は与える摂動によって5パターン存在することが考えられる.

それぞれ数値シミュレーションから得られた対称性の高い振動パターンの塩水振動子が2個の時と3個の時のダイアグラムを作成し遷移過程から相関関係について調べた. 実際に塩水振動子を用いて行う実験では塩水振動子は与える摂動が少しでも変わるとすぐに崩れてしまう. 数値シミュレーションを用いて塩水振動子の挙動を観測することで実際の実験では観測が難しいパターンの運動をとらえることができた.

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メトロノームの運動方程式

久保雄輝

2つの円筒の上に板を乗せる. 板は水平であり, 一つの方向だけに自由に動けるようにする. 板の上に複数のメトロノームを置き振動させる. はじめはバラバラに振動していて も徐々に振動が揃っていく「メトロノームの同期現象」がある. この現象を研究するためにはメトロノームの運動方程式が必要である. そこでメトロノームの運動方程式を立てることにした.

メトロノームを実際に触ってみると次のような性質があることがわかった.

  1. 針を一定以上ずらしてから手を放さなければすぐに止まってしまう
  2. 一定以上針をずらし手を放すと往復運動をし針の初期位置によらず安定状態の振幅は同じ
  3. メトロノームの針には上に遊錘, 下に固定錘と呼ばれる2つの重りがついており, 遊錘を動かしテンポを変えても安定状態の振幅は一定である
  4. まずはじめに単振子の運動方程式を考える. 単振子は重りの手を放つ位置で振幅が決まる. これはメトロノームの振幅は初期位置によらないという性質に反している.

    次にゼンマイの力を考える. メトロノームをよく観察したところ, この仕掛けにより針は真ん中を少し過ぎたあたりで外側へ押し出されていることがわかった. この力を三角パルス関数を用いて表し, 単振子の運動方程式に加えた. すると単振子はそれ自体が周期的な運動をするため, それにこのゼンマイの力が加わると針の振れ角が徐々に大きくなっていき発散してしまう. そこで抵抗を考えればうまくいくのではないかと思い, 速度に比例する抵抗の項を加えシミュレーションを行った.

    するとこの運動方程式では針を一定以上ずらさなければ停止してしまい, 針を一定以上ずらすと針の初期位置に関わらず同じ周期解に接近していくことがわかった. しかし遊錘を動かしメトロノームのテンポを変えることを角振動数を変えることで表し, シミュレーションを行ったところ, 角振動数を大きくすると振幅が小さくなることがわかった, これは角振動数を大きくしたことにより速度が速くなり, それに比例する抵抗も大きくなったためであると考え, 別の抵抗を考えることにした.

    もう一度メトロノーム内部を観察すると, 針を外側へ押し出す仕掛けのところで軸にある金属板と歯車の歯が接触していることがわかった. これが摩擦抵抗となっているのではないかと考えた.

    そして再度シミュレーションを行ったところ, 針を一定以上ずらさなければ停止し, 一定衣装針をずらすと針の初期位置に関わらず同じ周期解に接近した. さらに角振動数を変えシミュレーションを行ったところ同じ振幅で振動をした.

    本研究により, メトロノームの運動方程式は単振子にゼンマイの力と軸による摩擦抵抗の項を加えた形で表すことができると結論づけた.

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    マルチコアを用いた並列処理-OpenMPを用いたソーティングと特定物体認識の並列アルゴリズム-

    下田達哉

    近年、1つのCPUに複数のコアを搭載したマルチコアCPUが普及している。1つの プログラムを分割して並列に処理を行えば、そのプログラムの性能を向上させ ることが可能である。本研究では、ソーティングと特定物体認識を題材として、 その実行時間を計測する実験を行い、これらの処理速度を向上させる方法を考 えた。並列プログラミングには、マルチスレッドプログラミングの為のAPIとし て開発されたOpenMPを用いた。

    まず、データの集合を並び替えるソーティングの実験を行った。本研究では、 いくつかのソーティングアルゴリズムを並列化し、逐次時と並列時の実行時間 を比較した。並列実行時に最も良い結果となったのは、クイックソートとマー ジソートを組み合わせたアルゴリズムであり、物理コア数12(論理コア数24) のPCを用いてスレッド数16で実験したところ逐次時と比べ最大で6倍程度高速と なった。

    次に、特定物体認識の実験を行った。特定物体認識とは、未知画像の中に写っ ている物体と同じ物体が写っている画像を複数の画像の登録してあるデータベー スの中から見つけ出す処理である。並列実行するスレッド数を変えて実験した 結果、スレッド数をCPUの論理コア数と等しくしたときに最も高速化できること がわかった。データベースの画像の枚数を増やして同様の実験を行った際も、 スレッド数を論理コア数と等しくしたときが最も高速であった。

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    FitzHugh-Nagumo モデルと心臓におけ る刺激の伝播

    新城直幸

    現在医学の進歩により様々な病状や症状の生理学的メカニズムの解明に向かって研究が進んでいる。生体内で最も重要な臓器の一つは心臓である。心臓はある一定のサイクルで鼓動しており, このサイクルが乱れると心筋梗塞や心室細動などを引き起こす原因となる。さらに, 心拍数が増加する頻脈や無秩序で不規則な電気刺激が発生する細動などの不整脈は死亡率の高い危険な不整脈であり, 心臓に関する病気による突然死の約80%~90%を占める。この不整脈をどのように防ぐかが重要な課題である。心室細動の主な原因は心臓内における刺激の伝播が何らかの影響により一時的に遮断されることによりスパイラル波と呼ばれる渦巻状の波形が生成され, このスパイラル波が分裂, 融合, 消滅を繰り返すからであると考えられている。しかし, 突発的な心室細動が原因と考えられる突然死の約9割が心臓に疾患のない人に起こることから, 心室細動などの突発的な不整脈のメカニズムは未だ詳しく解明されていない。

    本研究では心臓の生理学的現象について着目し, 心臓の電気刺激の伝播現象について現象論理的に提案されたFitzHugh-Nagumoモデル方程式を用いて, 心臓での刺激の伝播を解析していく。

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    感染症の拡散伝播モデルの進行波

    多賀正道

    近年は人間の行動範囲が世界全体に広がり, それに伴い動植物の持込等で既存の生態系を脅かす例が相次いでいる. ここ滋賀県の琵琶湖でも外来種による固有種の絶滅が危惧されている. 外来魚が琵琶湖に放流された時点では少数であったはずの魚がなぜ琵琶湖じゅうを跋扈できるまでに数を増やし分布域を広げていったのか. このような現象は近年生物拡散の現象としてモデル化され数学的に研究されている.

    本研究ではその生物の拡散現象と共通した性質を持つ例として感染症モデルを取り上げる. 今回取り上げた感染症モデルは未感染者, 感染者, 回復者(除去者)の Kermack-McKendrick モデルに拡散効果を入れた反応拡散方程式系である. これは連立の非線形偏微分方程式であり, 具体的に解を解析的に求めることは一般には難しい. そのため, 未感染領域に感染が伝播していく様子を表す解について焦点を絞って対応する. このような様子を表す解は進行波解と呼ばれる. 進行波解は一定速度, 一定波形で未感染領域を侵蝕していく.

    進行波解を用いることにより, 感染症はある一定の条件のもとで流行し, 未感染者が多ければ多いほど速く伝播することが示される. つまり, 感染症にかかった患者を隔離しておくことは, 未感染者を周りに近づけないようにして感染症の伝播のスピードを緩和しようとするものであり, それが理にかなっていることがわかる. 人口密度が高い地域では感染症がひとたび出現すると非常に速いスピードで伝播する. 都市部ではより一層の感染症対策が必要である.

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    ユビキタス・センサーネットワークの領域被覆問題

    中邨光太

    ユビキタス・センサーネットワークの領域被覆問題とは、『2次元平面内の凸の集合に無数のセンサー付き無線端末を散布させセンサーが平面内を全て監視できているかどうかを問うもの』である。センサーは「周囲を監視する機能」と「近くにいる他のセンサーを認知、通信する機能」のみを持つ。

    センサーの監視領域が空間内を完全に被覆出来ているかどうかを、計算機によって確認できるような仕組みを作ることが本研究の目的になる。その方法として、今回の実験ではホモロジー計算によって求める。その手順は以下のようになる。

    • (0)監視領域の半径rと通信できる距離rdの間に、3rrdという関係を持たせておく。
    • (1)距離がrd以下のセンサー同士を直線で繋ぐと、ひとつの図形(多面体)が出来上がる。  このとき、3つのセンサーを結んだ直線が三角形を成していれば面とみなす。  4つのセンサーが互いにリンクして四面体を成していれば3次の立体とみなす。
    • (2)この多面体の頂点、辺、面の情報から対応するベクトル空間を作る。
    • (3)頂点、辺、面のつながり方からそれらのベクトル空間の間の線形写像を作る。
    • (4)このベクトル空間と線形写像の組からホモロジーのベクトル空間を求める。

    本実験では、ランダムにセンサーを配置してグラフを生成し、その様子をOpenGLによって出力しつつ、3単体までのリンクし合うセンサー同士の組をtxtファイルに出力する(手順の(2)までに相当)プログラムを作成した。さらにホモロジー計算を行うことができる「CHomP」によって実際にそのグラフ構造についての情報から計算を行い、セキュリティホールの存在を突き止められるかを確かめた。また、CHomPによる計算結果から求まる答が「被覆できていない疑いのある部分の数」であることについてや、txtファイルにどの次元の単体まで記述すればこの問題を解くにあたって十分かを一考した。

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    PerlとYahoo!APIを用いた特定とピックのBlogデータの抽出と意見分類

    濱岡俊介

    最近、BlogやTwitterと言ったHPを持たなくても気軽に人に自分の意見を伝えることが出来る手段が増えてきています。そう言った気軽さのためか、目にする情報量の増加からどの情報がいいのかわからなくなってしまうと言ったことがあると思います。

    今回私は、Yahoo!API(検索結果をプログラミングの関数のようなノリで使える)を使い特定トピック(話題)のBlogデータを抽出し、それを意見情報によって分類することを試みました。プログラムは全てスクリプト言語であるPerlを使用しました。

    実験として扱ったトピックは「消費税増税に賛成か、反対か」と言うもの。これを賛成、反対と言った情報を元に分類しました。

    手法はスライドにも載せたPN分類法とドメイン特徴語法の2手法です。どちらの手法もあらかじめトピックに関連した学習データ(どれが賛成っぽい文章か、と言ったデータ)を使い新しく現れたBlogデータを分類します。

    分類の際に使用したツールとしては形態素解析器MeCabやPerlのモジュールなどがあります。

    今後の研究課題としては

    1. 学習データを手動で用意しなくてもトピックに関連した学習データを検索エンジンの結果などの利用で自動的に構築するようにする。(より実用的になる)
    2. 分類手法をSVM(サポートベクターマシン)やナイーブベイズ分類器と言った機械学習手法に切り替える。(分類の精度向上)

    以上です。難しかった部分は是非ネットや本で調べて見てください。勉強になると思われます。

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    格子点の幾何学

    山下まふみ

    本論文では,格子点を頂点とする多角形,いわゆる"格子多角形"についての興味深い定理をいくつか紹介する.格子点の幾何学は,今日ではn次元空間の離散幾何学として拡張され,多くの定理がn次元ベクトルの言葉で述べられているのであるが,ここでは2次元の正方格子に話を限定してすすめていくことにする.

    1. 格子点の理論を創始したミンコフスキーによる『ミンコフスキーの定理』.
    2. ある格子多角形が与えられたとき,その内部や周上に含む格子点の個数で図形の面積を求めることができるという『ピックの定理』.
    3. 内部・辺上・頂点それぞれの格子点の面積への貢献度を考え直すことにより,ピックの定理をまた違う側面から見直した『森原の定理』.
    4. 格子点でない多角形や円,正多角形についての定理(それぞれが単発的でなんの繋がりもないように感じるが,実はこれらの定理がミンコフスキーの定理やピックの定理を証明するのに大きな役割を果たしている).

    「格子点の幾何学」のユニークな世界は,ただ暗記した定理や公式あるいは例題を単に手際良く計算して終わるのではなく,その問題と深く関わってこそ味わえる数学のおもしろさを感じることができるのである.

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    数理情報学科トップ
Last Modified: Saturday, 18-Mar-2017 16:20:13 JST