受賞者と題名

各研究の概要

基本図による 5 近傍粒子セルオートマトンの解析

奥村敬済

セルオートマトンは,渋滞や森林火災など微分方程式で表現することが 困難な現象を扱うのに適したモデルである。

本研究の目的は,2値5近傍セルオートマトン(PCA5)を Max-Plus形式の発展方程式で表すことである。 PCA5はそのルール数の多さからほとんどが解明されておらず, Max-Plus形式の発展方程式で表すことが出来れば 超離散化によって連続モデルとの対応が見え, さらなる解析への応用も可能となるはずである。

結論として,PCA5の発展方程式を一意に求める方法を発見し, 基本図が簡単な直線の組み合わせで表される36個の ルール全ての発展方程式を得ることに成功した。 また,PCA5を系統的にtype-A,B,C,Dと分類することにも成功し, 偶然ではあるが時空図がフラクタル的性質を示す PCA5−79の発展方程式を導くことも出来た。 そして一部のPCA6においても同様の考え方で 発展方程式を構築出来ることを確認し, さらなる一般化への可能性を提示することが出来た。

今後の課題は,基本図が乱れているルールへの対応と, 近傍数増加に伴う計算量増大への対応等が挙げられる。

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粒子法による固液連成シミュレーション手法の GPU を用いた高速化

木村健治

本研究はGPGPU統合開発環境であるCUDAを用いてGPU上で実行される粒子法シミュレーション手法の開発を行った。GPGPUとはGPUを汎用計算に用いることであり,CUDA はその開発を支援する環境の 1 つである。単純な計算能力であればGPUはCPUの数十倍の性能を持っている。しかしその能力を発揮させるためには同一命令を発行することとメモリアクセスの一貫性を確保することが重要となる。粒子法とは連続体を離散化して多数の粒子の集合として近似する手法である。

固体と液体の混ざったシステムを計算機でシミュレートすることは人が立ち入れない原子炉の中や行くためにコストが掛かってしまう宇宙空間のような場所での物理現象を検証するために有用である。しかし固体と液体との連成は容易ではなく,計算時間が膨大なものとなってしまう。そこで,粒子法とGPUを用いることで固液連成と高速な処理を実現する。

本研究では粒子法としてSPH法を用いNavier-Stokes方程式に従う非圧縮の粘性流体と固体を表現した。固体としては剛体を扱っており,剛体は多数の粒子で近似している。流体と剛体との連成は,剛体粒子も流体粒子として扱いNavier-Stokes方程式の圧力項と粘性項を計算することにより実現する。これらの方法により,流体と複数の剛体が存在する系を扱えるシミュレーションを開発した。しかし粒子法では計算解像度や計算領域を増やすために粒子数を増加させる必要があるため,広領域かつ高解像度の高速なシミュレーションを実現することは難しい。そこで,GPUを用いることによって高速化を実現する。GPUの性能を発揮できるようにGPU実装では全ての計算手順でメモリアクセスの一貫性を考慮した手法を用いた。

実験環境としてCPUに Core i 7 2600K,GPUにGTX560Tiを用いて計算時間の比較実験を行った。連成シミュレーションの計算時間は粒子数33000程度までの実験結果でGPU実装はCPU実装の3倍程度の高速化を実現している。また,計算時間の増加率がGPU実装の方が低いことから,粒子が多くなるほどGPU実装が高速な処理となると予想される。

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画像検索のための近似最近傍探索アルゴリズム

村下仁嗣

高速に画像を検索する手法として,Spectral Hashing(SH)に基づくBag of Features(BoF)アプローチによる手法を検討する。 画像検索で一般的なBoFアプローチでは,画像の局所特徴量を数百から数千の"visual word"にクラスタリングし,それを元に画像の特徴を抽出する。本研究では,従来のBoFの代わりにSHを用い,局所特徴をLbit(Lは20から30程度)に符号化して2のL乗次元のスパースな特徴ベクトルを抽出する方法を提案する。

この手法の有効性を確認するために,それぞれ1万枚程度の画像から成る2種類の画像データベースを用い,検索の精度と時間を従来法と比較する実験を行った。その結果,近似最近傍探索のライブラリFLANNを用いた場合と同程度の検索精度で,検索時間を数十分の一にできることがわかった。

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曲線の曲率流方程式と進行波解

青山友美

自然界において異なった相や物質が混ざり合っているとき,その2つの状態の境目が見られることがある。このような2つの相の境目は界面と呼ばれる。2次元平面における2つの相の界面は一般的に曲線と見ることができる。このような界面の動きを記述する運動方程式が知られており,本研究では界面が曲線の場合の曲率流についてその一定の形状で進行する波をテーマにする。

曲率に一定の外力を加えた場合,円の形状をした定常解が存在する。それ以外に定常的な形をもった解を捜すことが本研究の目的である。一定の形状で進行する無限の長さをもつ曲線で3つのタイプの進行波が得られた。1つ目は自己交差しない進行波の族である。ある一定速度以上のものが存在し, V字形状をしており,その速度は無限遠方で曲線が漸近する2つの直線の角度と関係している。2つ目が1回自己交差する進行波の族である。形は1つ目とよく似ているが,同じ方向に進む場合は1つ目と曲率の符号が正反対になり,中央で自己交差している。3つ目が周期的に無限回交差するマルチループ状の進行波である。これらの進行波は具体的に表すことができ,その曲線を表示することができる。

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世代数の異なる複数種の離散競争モデル

三宅由晃

本研究では複数の世代を持つ生物種間の競争モデルを考え,世代数が異なる場合にその競争による絶滅や共存可能性について数理的に調べることを目的とする。今回の研究では新生児の零世代から始まり,最高齢の世代のみが次の時間で新生児を出生するようなモデルを考える。また,新生児においてのみ非線形の効果として種内競争を考慮している。2種類の競争モデルについて,まず2世代生物と4世代生物の競争を考える。初期条件としてそれぞれの生物について1つのコホートしか考えないとすると,共存を表す不動点が安定になるようなパラメータに関する条件が得られた。この制限された条件では2種類の生物は共存できる。次に2世代生物と3世代生物の競争を考える。この場合にも共存する不動点が存在し,その存在する条件を調べると2世代生物と4世代生物の競争よりも共存できるパラメータの範囲が広いことがわかった。他の世代数の組合せも調べた結果,2種類の生物の競争において最小公倍数が大きい世代数を持つ2つの種の方がより共存しやすいという予測が得られた。最後に2世代生物と4世代生物の競争に3世代生物を加えた場合の共存について数値計算を用いて議論する。

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Last Modified: Friday, 17-Mar-2017 18:57:28 JST