受賞者と題名

各研究の概要

Web町家データベースの作成

白石亮介

近年、町家などの伝統的な木造建築は失われつつある。最近では町家を活用した店舗や賃貸物件など町家への関心、需要が高まってきているが持ち主が文化財としての価値を知らずに取り壊したり、放置したりと供給は多くはない。町家などの伝統的な建築物を活用するためには、放置されている建物を把握し、住民の理解を得る必要がある。

本研究「Web町家データベースシステム」とはインターネット上に置かれた町家データベース管理システムのことであり、システムを作成することの目的は町家を代表とする伝統的な木造建築物の現状を把握することである。

現状から伝統的な建築物の有効な活用方法を考えることに役立てられる。また一般の利用者にも項目の一部を公開することで、自分の周囲にどれほどの歴史的な建物が存在するのかなどを知る事で住民も保全の意識を高める等、伝統的な構法を持つ建物の継承、歴史的な街並み・修景の保全に役立てることにもなる。

研究で作成したシステムには、建物情報を記憶させている「matiya」テーブルと建物情報の削除・修正を依頼するための「delorder」テーブルの2つが存在し、機能としては“登録”、“参照”、“修正・削除”がある。

本研究のデータベースへの登録時の調査については調査員が実地で外観調査を行うことを想定している。またGPSによる位置情報取得が出来、質問項目及び入力内容が十分確認できる程度の画面の大きさがある端末(タブレット端末など)を調査員が使用しているとしてシステムを設計しており、質問項目並びに利用性を設定している。

本研究では当初に思い描いていたWebデータベースの作成、及び現在地や写真情報の投稿機能についてなどは実装することが出来た。しかし、実際にデータベースを公開し活用していくにはまだまだ問題は多い。例えば、公開用ページの見せ方や使い方については、一般利用者が何を知りたがっているのか、どのように見せることが町家の理解、関心並びに活用へとつながるのかといった内容を調査し修正する必要がある。さらにデータベースの内容に関しても、外観からのみ得られる調査内容とはいえ表札や住所、空き家など個人情報に抵触する項目もあり、情報保護についても規約を考える必要がある。システム面での課題に関してはCSSによるレイアウトの表示がWebブラウザごとに異なり非常に見にくくなってしまう場合があり、広く公開するのには適していない。今後はブラウザごとに適したページの処理を行うなどの解決策で問題を解決することが求められる。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

雪の結晶の成長シミュレーション

井上菜摘

雪をよく見ると、人々を魅了するような結晶がある。

雪は、大気中の水蒸気が氷となり雪の結晶が成長をし、地上へと舞い降りてくる。

雪の結晶が成長するには、2つの環境が必要になる。まず1つ目は、大気中に存在することができる水蒸気量(湿度100%)を超えて、水蒸気が存在する過飽和の状態であること。2つ目は、大気中の水蒸気が過冷却の状態であること。

この2つの状態でありなおかつ核が現れたとき、水蒸気は昇華凝結をし潜熱を放出し氷になる。そして潜熱の影響を受け昇華凝結を繰り返し、結晶がある程度の大きさにまで成長をすると、重力により地上へと舞い降りてくるのである。

地上へ舞い降りてきた雪の結晶は、気温と水蒸気量の違いにより、さまざまな形をしている。

今回の研究では六角格子状のセルモデルを使用してシミュレーションを行う。

シミュレーションの結果、六角形の対称性を持つ結晶が成長をした。そして潜熱の影響を可視化することで、結晶の成長は潜熱が放出されることで成長を抑制されていることが確認できた。凝固点から順に気温を下げていくと密な結晶に変化をした。その原因は、気温が凝固点に近ければ、潜熱の影響を大きく受けるからである。中谷ダイアグラムに載せられている、樹枝状・扇形・模様のある六角形の板・模様のない六角形の板、このすべての結晶の成長を、シミュレーションすることができた。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

4種系競争モデル:3すくみの集団との共存について

打田悠斗

生物は、生きていくために餌を巡って競争し、競争関係にある生物同士には優劣関係が生 まれる。その中で、私は3すくみの競争関係にある生物集団に興味を持った。3すくみとは、 3つの生物が互いに得意な相手と苦手な相手がいることにより、身動きが取れずにいる状態 のことである。どの2種をとっても優劣関係がはっきりしているのにもかかわらず3種にな ると力が均衡し合うという不思議な関係に魅かれた。

本研究では、3すくみの状態で安定している生物集団の中に4種目が侵入してきた場合、 4種が共存することが可能かどうかを生物の個体数の増減の過程を簡単に表したロトカ・ヴ ォルテラ競争方程式を用いて調べることにした。

4種目の侵入の仕方について2つの場合を考えた。まず、どの種よりも強い競争関係にあ る4種目が侵入する場合、3すくみの状態は次第に崩れ不安定となり、強い4種目のみ生き 残ることを確認した。次に種4が種1とのみ競争し、種1に比べて劣るような競争関係にあ る場合について考えた。このとき、4種が共存できる場合があるということを数値計算で確 かめた。

以上のことより、種が増え複雑に関係し合っていても、共存可能な安定な状態があるとい うことが数理モデルによって検証できた。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

ポップアップフライの軌道計算

菊田昌大

野球では真上に高く打ち上げた打球に対して野手が素早く落下地点に行けず、落球してしまうことがある。その原因が打球の軌道にあるのではないかと考える。

そもそも打球の軌道とは真空中ではきれいな放物線を描くはずであり、野手もそれに合わせて落下地点に向かう。しかし、現実世界においてはきれいな放物線にはならないのではないか。そしてきれいな放物線にならない原因として打球の進む向きとは逆向きに働く空気抵抗と、ボールが回転することによって起こるマグナス力ではないかと仮定した。

まずボールとバットが衝突した瞬間にどのような力がボールに加わるのかを考えた。またその力がボールとバットが当たる箇所によってどのように変化するかを調べた。

投手から投げられたボールは回転しながら打者に向かってくるので、一定の角速度を持ち打者に近づく。そのボールを打者が打つと角速度、打球の進む向きは変化する。角速度や打球の進む向き、打球の速さは衝突する箇所によって変化する。“質量中心の速度”から衝突後の速度を求め、“角運動量の保存則”から打球の進む向き、角速度を計算できる。

次に実際にバットから放たれた打球がどのような軌道を描き飛ぶかを考えた。上で述べたように空気抵抗とマグナス力が加わると仮定した。打球に加わる力を考え縦方向と横方向で運動方程式を立てる。Mathmaticaを用いて実際の軌道を計算する

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

主成分分析を用いた背景画像の再構成による移動物体の検出

小濱巧也

本研究では、明るさの変化する動画像の中から移動物体を検出する方法を考える。移動物体検出の最も単純な手法は「背景差分」にもとづくものである。この手法では、事前に用意した背景画像と入力画像の誤差に対して閾値処理を行い、画素単位で移動物体を検出する。しかし、単純に1枚の画像を背景として背景差分を行うと、入力画像の背景に明るさの変化があるような場合に対応できない。そこで本研究では、移動物体が写っていない状況で録画しておいた動画像を用いて、明るさの変化に対応できるような背景モデルを主成分分析を用いて作成する手法を考えた。

主成分分析とは、入力データの共分散行列から求めた固有ベクトルを用いて、入力データの分散をよく表す特徴をとりだす方法である。本研究では、この方法によって作られた背景モデルを用いて、移動物体の写っている画像を入力として、移動物体の写っていない本来の背景画像に近似した画像を作成する(これを「再構成」という)。そして、入力画像と再構成された画像の間で背景差分を行い、移動物体を検出する。

このとき、移動物体の写っている画像をそのまま入力に用いて再構成を行うと、移動物体領域の画素値の影響を受けてしまう。そのような領域は無視して再構成するほうが、より本来の背景に近似した画像を作ることができると期待できる。そこで、画素毎に入力画像と再構成画像の誤差を評価し、重みを付けて再構成をくり返し行う方法も検討した。

実画像で実験を行ったところ、背景画像と入力画像の明るさが異なるために単純な背景差分では移動物体の検出に失敗していた場合でも、本研究の手法ではうまく明るさ変化に対応できていることを確認した。また、重み付き再構成については、固有ベクトルの数を多くすると、重み付けの効果により移動物体をより正確に検出できることを確認した。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

Twitter日本語会話ログを用いた人工無脳の作成

谷河息吹

本研究では、Twitterから公開されている日本語の会話を自動で取得するプログラムを作成し、取得したTwitter日本語会話ログを用いて人工無脳の作成を行いました。

人工無脳とは、テキストまたは音声で会話をシミュレートするプログラムのことです。会話をシミュレートするプログラムといえば、鉄腕アトムのアトムや機動戦士ガンダムのハロのような自分で考え喋るようなロボットを思い浮かぶかもしれませんが、これらは人工知能と呼ばれ、人工無脳とは異なります。人工知能は人間の入力を知的に解釈して応答を行いますが、人工無脳はデータベース上に存在する最もそれらしい応答文を返しているだけです。

本研究の人工無脳は、応答文を生成するために3つの段階を踏んでいます。まず、ユーザの入力文に似ている文をTwitter日本語会話ログから探します。次に、似ている文の返答をTwitter日本語会話ログから抽出し、その中からユニークな文を削除します。最後に、ユニークな文を削除した返答の中から一般的な文を抽出し、それを人工無脳の応答文としました。

問題点としては、Twitterの会話に現れない内容には対応できない、文脈的な会話には対応できない等があります。対策としては、Twitter以外の日本語会話ログを導入する、最新のユーザの入力文以外も考慮して人工無脳の応答文を生成する等が挙げられます。

全てのプログラムは自然言語処理に強いスクリプト言語Pythonを使用して、作成しました。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

河川における侵食と堆積の計算機シミュレーション

佃加奈子

自然に存在する河川は、水面の高いところから低いところへ向かって流れている。 さらに、土地の傾斜が高い部分では水の流れが速く、緩やかな部分では水はゆっくりと流れている。 本研究では、このように土地の傾斜の違いから、河川の流れ方が異なっていることに注目し、河川の侵食・堆積の様子を計算機を用いてシミュレーションした。 シミュレーションをするに当たって、河川を細かくセルに分割した離散化計算モデルを作成した。各セルには、’水量’と’土地の高さ’の2つを考え、2つの要素が変化するルールを設定した。 そして、河川を1次元的に分割したセル(河川の断面の動きに相当)と、2次元的に分割したセル(上から見た河川)の2つのモデルを作成した。 シミュレーションから、水面の傾きが急であれば土地をより侵食し、緩やかであれば土地に土が堆積をした様子が見受けられた。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

文章作成支援ツールの作成及び同義語自動獲得の研究

二輪和博

私たちが文章を書く際には多様な表現を使いたい場合や、逆に表現を統一したい場合があるかと思う。本研究ではそのような需要に応えるために、文書作成支援のためのツール作成を行った。ツールの機能にはテキストエディタとしての基本的な機能に加えて2つの独自の機能がある。1つ目は語句を入力するとその同義語の一覧が表示できる機能、2つ目は文章中に含まれる語を自動的に検出して、その同義語の一覧とそれぞれの文章中での使用回数を表示するものである。これら2つの機能によって文章作成支援を行うことができる。

しかし文章作成支援ツールでは常に同じ同義語のデータを使用しているので、新しく生まれた語句などはデータに含まれておらず対応できないという問題がある。それを解決するため同義語のデータを自動獲得するための研究も行った。

同義語というのは同じ意味を持っている語であるので、任意の2つの同義語は文章中で同じような使われ方をするのでそれぞれの共起語の分布は似ていると考えられる。したがってそれぞれの語句について共起語の分布をベクトルとして表し、その類似度が高ければそれら2つの語句は同義語であると判定する方法を取った。

実験結果としては十分な結果を得られなかった。原因として、本手法はそれぞれの語句の周辺情報によってクラスタリングを行っているものと考えられるので、「月曜日」と「火曜日」のような同系統の語句のペアを同義語と判定してしまうことなどが考えられる。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

メトロノームは本当に同期するのか

三崎洋平

メトロノームの同期現象

2つの円筒の上に板を乗せる. 板を水平に保ち,一つの方向にだけ自由に動けるようにして, 板の上に複数のメトロノームを置きバラバラに振動させる. すると徐々に振動パターンが揃っていく. これがメトロノームの同期現象である. メトロノームには個体差があるが,それでも同期現象が起こるらしい. そこでメトロノームのメモリがどの程度異なっていても同期するのか, 数値シミュレーションを用いて調べた.

同じメモリのメトロノーム

2 つのメトロノームのメモリが同じ場合,位相差は 0 となり, 振幅も等しくなり,振動数も揃う. すなわち,完全に同期する. 時間の経過とともに位相差の逆転現象が数回起こるが,十分に時間 が経過すると位相差はなくなる. また,はじめは等しい振幅は,いったん,異なる値になるものの, 十分に時間が経過すれば再び等しくなる.

少しメモリが異なるメトロノーム

メモリが少し異なる場合,しばらくすると振動数は揃い,位相差も 一定値になるが,0 ではない. また,振幅は異なる値に収束する. すなわち,少しメモリが異なる場合は,振動数のみが同期する. 元々の振動数が大きいほうの振幅が大きくなり,バランスが形成さ れることが確認された.

メモリがかなり異なるメトロノーム

さらに,メモリの差を大きくすると,突然,振動数すらも揃わなくなる. バラバラに運動しているように見えるが,振幅が周期的に変動している ことから,一定の相互作用があることは確かである.

動画プログラム

OpenGL を用いて同期までのプロセスを可視化するプログラムを作成した. メトロノームの針だけではなく,板の動きも表現したものであり. 実際の運動を良く再現している. 任意の個数のメトロノームを扱うことができ,同期に至るまでの過程の 理解にとても役立つと思う.

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

数理情報学科トップ
Last Modified: Saturday, 18-Mar-2017 16:21:02 JST