受賞者と題名

各研究の概要

塩水振動子の同期形態の位相縮約による解析

太田智史

塩水振動子とは塩水と真水の密度差から生まれる対流で, この現象は海洋学者Martinが塩分濃度による海流を再現しようとして 発見したものである. 塩水振動子の実験は簡単で, 真水を入れた水槽に底に小さな穴を開けたコップ(振動子)を固定して浮かべる. コップには塩水(5mol/l程度)を入れておく. コップ内水面の圧力が外水面の圧力より大きければ,塩水が コップの底の小さな穴を通って流れ出る.しばらくすると内水面が下がり, 今度は外水面の圧力が内水面の圧力より大きくなることでコップ内部に真水が流れ込む. このような振動を長時間繰り返す.

複数の振動子があるときは同期現象が見られる. 例えば2個の振動子を浮かべると, はじめはバラバラに振動するがしばらくすると 片方の振動子から塩水が流れ出ている間に他方の振動子には真水が流れ込むという 逆位相(位相差180度)の同期が観測できる. また3個のときは位相差が120度ずつの同期形態が観測できる. ここまでは振動子の数をNとすると,位相差が360/N度に従っているように見える. では振動子が4個のとき,果たして位相差が90度ずつの同期形態が 安定であるかと疑問をもち,本研究を始めた.

塩水振動子の数理モデルとしてvan der Pol方程式と同じ形に変形でき, リミットサイクルを持つRayleighタイプの方程式を考える. 数値シミュレーションから振動子が4個のときは 位相差が90度ずつではなく, 逆位相であるペアが2つある同期形態を安定な同期形態の候補として得ることができた. また,ペア同士の位相差が任意であることから, 私たちはこの同期形態をFree Pairsと名付けた.

本研究では位相縮約の理論から位相方程式を導出し. 塩水振動子の各同期形態に対して 位相方程式の線形化固有値問題を考える. 固有値と固有ベクトルから同期形態の安定性を明らかにした.

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手書きデザイン案からのWebページ自動生成

高木啓

近年、インターネットの普及が進み、webページを政策する人も年々増加している。現在では個人でもWebページを作る人がいるくらいである。本研究では、知識がなくても手軽に早くWebページを制作できる手法を提案する。

本システムは、手書きのWebページレイアウト案を入力画像として読み込み自動でHTML、CSSファイルの出力を行うというものである。入力画像は矩形の集合でなければならず、使用できる色は黒色または赤色である。赤色で描いた矩形の辺に対応するHTML中の要素は可変長となる。

手書きレイアウト案から、Hough変換を行い、多めに線分の抽出を行う。線分の抽出を行った後に、1つの辺にするために統合処理を行う。次に、線分の分割を行い矩形検出に必要な線分すべてを抽出し、線分の色の判別を行う。この線分を元に矩形の検出を行う。検出した矩形の中から、不要な矩形の削除を行う。矩形それぞれの親子関係を構築してから、HTML,CSSファイルへの出力を行う。

矩形の検出率を調べる実験、正しいレイアウトが取得できているかの実験を行った。本システムの矩形検出手法はとても効果的であることが確認できた。また、出力されたHTML,CSSファイルは実用に耐えうるレイアウト構成になっていることを確認できた。

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確率5近傍粒子セルオートマトンの統合モデル

津川未希

セルオートマトンとは、セルと呼ばれる空間格子の状態(0または1の値)が、定められたルールによって時間発展する数理モデルである。様々なルールを設定することによって、セルオートマトンは多様な現象の表現が可能である。各時刻のセルの状態は、1ステップ前の状態から、ルールに従って一意に決まる。n個の近傍のセルから、セルの次の状態が決まるとき、n近傍セルオートマトンという。

3近傍セルオートマトンにルール184というルールがある。これはセルの値の総和が保存されるルールであり、交通流を表すモデルとして有名である。このようなセルオートマトンを粒子セルオートマトンという。ルール184は最も単純な交通流モデルであり、実際に応用する際には、より多くのセルを考慮した4近傍や5近傍の粒子セルオートマトンが必要である。4近傍の粒子セルオートマトンは4個、5近傍の場合は115個のルールが存在していることが分かっているが、これらのルールの基本図とMax-Minで表された発展方程式の関係が最近明らかになった。

一方、セルオートマトンの時間発展に確率を導入する研究が活発に行われている。確率を導入することにより、さらに現実に近いモデルとして応用が可能となることが期待できる。しかしながら、確率変数を含んだMax-Min表現の発展方程式を得る方法はまだ確立されていない。

本研究では、基本図と発展方程式の関係を用いて、幾何学的な観点から、確率変数を含んだMax-Min表現の発展方程式を得ることに成功した。従来の方法では、4近傍・5近傍の粒子セルオートマトンの確率化は難しいとされていたが、本研究で用いた手法により4近傍では4個、5近傍では16個のルールの確率化に成功した。

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多段階発癌の数理モデルによる研究

森本茂義

癌という病気は数多くある遺伝子のうちの一つに異常が生じることにより発症するのではなく,複数の遺伝子異常が積み重なる(段階的に進行する)ことにより罹る病だと考えられている(多段階発癌説). 大腸癌の発癌過程は,APC癌抑制遺伝子,K-ras癌遺伝子,p53癌抑制遺伝子が順番に遺伝子異常を起こすことにより生じるものと考えられている. さらに,この過程のどの時点かで細胞は染色体不安定(CIN:Chromosomal Instability)の性質を手に入れているとされている. 本研究では,遺伝子異常によって出現した突然変異細胞が集団を占める割合をマルコフ過程であるMoran過程により得られる固定確率(突然変異細胞が集団を占める確率)を適用して求め,発癌に至る過程を連続時間の確率過程によってモデル化する. まず,細胞内にCINの性質が現れる過程を想定し,癌抑制遺伝子が不活性化する確率を求める.その結果,大腸癌のように幹細胞が癌化する場合にはCINの性質が多段階発癌過程の早期に現れる可能性が高いことが示される. 次に,細胞数の多い集団において考慮すべき効果としてトンネリング効果と呼ばれる,突然変異細胞が集団を占める前に不活性化細胞が出現する過程について考える. これらの過程をもとに,多段階発癌によって大腸癌を発症する確率を求め,得られた期待数と実際の罹患率を比較する. その結果,高齢であるほど癌を発症する可能性は高くなるが,人間の生存期間中に癌に罹る可能性は決して高くないという結果となった.

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5種系Lotka-Volterra方程式における安定な共存

吉田府篤

一般的には,生存するために餌である被食者を捕食する生物が多数存在するが, 生態系を維持するためには, 捕食者と被食者が共存していく必要がある. しかし, どのような環境でも多種類の生物が共存できるわけではない. その一因として, 必要な資源(生物) を複数の捕食者が奪い合うことによって捕食者間で競争が生じ, 多数の種が共存しにくいということが考えられる. この捕食者間の競争を緩和させることができれば, 多種類の生物が共存することが出来るのではないかと考え,競争緩和による共存を具体的な数理モデルを用いて検証する.

本研究では,多種系モデルの共存解と安定性を考えていくために,個体数の増減の過程を簡単に表したロトカ・ボルテラ方程式を用いて調べることにした.また,被食者-捕食者モデルを拡張した1被食者-2捕食者モデルは,捕食者間で被食者を巡って間接的競争が起こるため,特別な場合を除けばどちらかの捕食者が滅びてしまうので3種が安定に共存できないことが分かっている.この間接的競争を緩和させるために新たな種を増やして全体として共存できるかを調べた.

具体的には,1被食者-2捕食者系の間接的競争と3種の食物連鎖のモデルを組み合わせて2パターンの4種系モデルを考えた.この2パターンのモデルについては,すべての種が安定に共存するパラメータの条件を決定することができた.次にこれら両方の食物網を含んだ5種系モデルを考えその安定な共存解について調べた.結果は,5種系モデルについて数値計算を行うとカオス的な挙動の解だけではなく共存平衡点が存在すると数値的に確かめられた。

多種系モデルは関係性が複雑で共存解を調べるのは一般的に難しい.しかし,被食者-捕食者の関係と競争緩和を考えることで共存が予想できる場合がある.このような考え方が多種系モデル方程式を考える場合の糸口になるのではないかと考えられる.そして,以上のことより,種が増え複雑な関係でも,数理モデルを用いて詳しく検証することができた.

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Last Modified: Friday, 17-Mar-2017 18:58:22 JST