受賞者と題名

各研究の概要

内心と傍心の解析幾何学的考察

倉橋果奈

京都大学数理解析研究所における研究集会において,大西先生・山岸先生・四ツ谷先生の 共同研究表の際に配布された資料に内心に関する興味ある結果が示されていた.それを見て 傍心についてどうなるのか疑問を持ち研究を始めた.

点A(-1,0),B(1,0)を固定し,点C(p,q)を平面上を動かしたとき,三角形ABCの内心I,傍心 IC, IA, IBがどのような領域を動くかについて調べた.これを調べるために,まず, I, IC, IA, IBの座標を,良く知られているベクトル表示の公式を利用して求めた.これにより求まった 式はそのままでは見通しが悪いので,さらに,取り扱いやすいように変形した.導出した表示 式は私の知る限り,どこにも載っていなかった.これらの式を用いると,次のことがすぐにわ かる.

点Cが楕円群x^2/a^2+y^2/(a^2−1)=1(a>1)でaの値を増やしていくと単位円の内部 を埋め尽くす.同様にして,傍心IC, IA, IBについても考察した.これら全てを合わせると平 面全体を埋め尽くすことがわかる.

なお,上記の式を0<a<1で考えるとこれは双曲線を表す.この双曲線群上を点Cが動いた とき I, IC, IA, IBがどのように動くかについても考察を行っている.

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円柱から発する音波の振動数と振幅の関係

近藤穂実

管楽器の一つであるサックスは、クラシック音楽からポップス、ロック、ジャズに至るまで様々な分野の音楽で用いられ、特に吹奏楽やビッグバンドには欠かせない存在である。サックスに限らず、管楽器の代表であるクラリネット・フルート・トランペットなど、管楽器を上げるとキリがない。木管楽器と金管楽器などの種類の違いはあるが、形状や材質の違いだけで実に多種多様な音を出す。

また、音の大きさは波の振幅、音の高さは振動数によるものだというのは知られている。音について学ぼうとすると、振幅と振動数は欠かせない要素である。そこで、管楽器での振動数と振幅の関係を調べるため、円柱の半径が内部と外部で異なるモデルを考えた。

手順としては、まず一定の半径の円柱内での音波の運動について調べ,同じ振動モードでは円柱の軸方向に進む波の速さが半径の大きいほど小さくなることがわかった。それを踏まえて、円柱の軸方向のみを考え、内部と外部で波の速さの異なる波動方程式で内部に一定の振動数の音源がある場合の解を求めた。この解を使い、振幅と振動数の関係を探った結果、外部での波の振幅は、振動数が開口端の共鳴条件を満たす場合に大きくなることが分かった。

この研究は、管楽器の多種多様な形状を一律に円柱でモデル化し、一つの振動モードだけを考えた、単純化した計算であった。実際の管楽器の複雑な形状や,全ての振動モードを考えると、さらに複雑な計算が要されると予想される。

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時間遅れをもつLogistic方程式の 定性的な解の挙動とその解析

野田康矢

個体数が指数的に増加するというMalthusモデルに、環境の制限を取り入れたLogistic方程式は個体群生態学において最もよく知られた個体群成長モデルのうちの1つである。Logistic方程式ではそのときの個体数の増殖への影響が瞬時に起き、解曲線はS字型の曲線になる。しかし、実際には個体群の成長はそのような単純なものばかりではなく、多くの生物個体群において個体数が増減を繰り返しながら変化する。

今回の研究では生物が生まれてから一定の大きさに成長するまでにかかる時間を想定して、時間の遅れをもつLogistic方程式を取り上げ、平衡解の安定性と数値計算の結果をまとめた。数値計算で時間の遅れを1と固定して、内的成長率を表すパラメータaを増加させたときの、解の挙動を調べた。始めは単調に環境収容力Kに収束したが、パラメータaを大きくしていくにつれて次第に解曲線は振動し、aがπ/2を超えた辺りから周期的な振動が見られた。 この現象を数学的に解析するため、平衡解Kで線形化し安定性を調べた。線形化方程式の固有値を決める方程式は超越方程式になる。その方程式を調べるとa<π/2のときには全て負の実部をもち、a>π/2のとき正の実部をもつ解が現れる。また、a=π/2で純虚数の解をもつことが分かった。結果として、数値計算の安定な状態が平衡解から周期解に変化するa=π/2の辺りでの解の挙動と、数学的解析として行った平衡解の安定性解析から得られた結果が対応することが確認できた。

今後の課題としては、2種以上の生物において競争関係や寄生関係といった場合に、時間遅れがあるモデルの研究を行いたい。

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青空文庫蔵書検索システム

藤江啓人

本研究は、無料で利用できる電子図書館である青空文庫の蔵書検索システムの作成を目的としている。

青空文庫のWebサイト上には作品名・著者名などでの検索機能が存在しているが、作品の内容を表す重要な単語(本研究ではキーワードと呼ぶ)での検索機能は存在しない。そこで、本研究では自然言語処理の手法を用いて本文から作品の特徴を表すキーワードを抽出し、作品名・作家名に加えて抽出したキーワードでの検索・閲覧機能を搭載したGUIベースの青空文庫蔵書検索システムを作成した。

キーワードの抽出はTF-IDF法という手法を用いた。これはある一つの単語について、一つの作品に多く登場するほど値が大きく設定される「単語の出現頻度(TF)」と、多くの作品に登場するほど値が小さく設定される「文書頻度の逆数(IDF)」という二つの値を計算し、それぞれを掛け合わせた値が大きければ大きいほど重要な単語であると判別する手法である。本研究ではこの手法を用いて青空文庫1万冊以上の蔵書すべてについて、最大30個のキーワードを抽出した。

本システムはキーワードの抽出精度とシステムの使いやすさについて評価した。キーワードの抽出精度は、単語の長さを制限することやTF値を重視することで概ね「らしい」キーワードを得ることができた。使いやすさについても概ね満足できるシステムを作成できた。

今後の研究課題はキーワードの抽出精度の向上と、システムの機能の追加である。

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クロスワードパズルの作成支援及びゲームの作成

村田隆平

本研究は、クロスワードパズル(以下、クロスワード)の作成支援とゲームの作成を目的としている。クロスワードとはカギと呼ばれる文章によるヒントを元に、タテヨコに交差したマスに言葉を当てはめてすべての白マスを埋めるパズルである。

本システムは「クロスワードの作成支援」と「クロスワードゲーム」の2つのシステムから成り立っており、それぞれGUI上で実行することができる。クロスワード作成支援システムはできるだけ簡単にクロスワードが作成できるように作成した。例えば単語検索システムである。このシステムは単語を検索するとき、縦読みと横読みの片方のみでなく縦読みと横読みの両方共当てはまる単語を検索することができる。また、作成したゲームはクロスワードのカギ(ヒント)を英単語にすることにより、英語学習にも利用できる。

本研究では単語辞書に含まれる単語がクロスワードに適当であるか評価した。実験の結果、約85%の確率で適当であった。適当でない単語とは漢字を正しい読みでカタカナに変換できていない単語と日常で殆ど使われることのない単語である。単語辞書を作成する際、日英辞書の見出し語を「MeCab]というオープンソース形態素解析エンジンを利用し、カタカナに変換した。その際、正しい読みで変換できなかった単語があった。また、クロスワード作成支援システムの黒マスのランダム配置機能も課題の1つである。クロスワードには黒マスルールというものが存在する。黒マスルールの中にいくつかルールはあるが本システムに実装できなかったルールは「黒マスによって盤面が分断されていけない」というものである。このルールを実装するために馬青教授や同研究室の人たちに助言を頂いていたが最終的に実装することができなかった。

結果として当初の目的としていたクロスワードの作成支援とゲームを作成することができた。しかし、幾つか課題の残る結果となってしまった。単語辞書の作成については漢字をカタカナに変換する方法を変更することにより改良できると考える。

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Bag-of-Featuresと色を特徴として用いSVMを識別器に用いた一般物体認識

横井宇倫

本研究では、画像中の物体を「犬」、「りんご」、「自動車」などの一般的な分類で認識する一般物体認識について考える。一般物体認識では、Bag-of-Features(BoF)と呼ばれる特徴表現がよく用いられる。BoFでは、画像から局所特徴と呼ばれるものを抽出し、それをヒストグラム化したものをその画像の特徴表現とする。本研究では、このBoFを用いて画像間の類似度を定義し、SVMと呼ばれる識別器で識別を行った。また、単純なBoFだけでなく、画像を領域に分割してBoFの特徴を作る方法(SPM)や、画像の色の分布を表すヒストグラムを組み合わせる方法も検討した。

これらの手法の性能を調べるために、6クラスの鳥画像、100クラスのCaltech101、256クラスのCaltech256という3種類の画像データセットを用いて実験を行った。BoFのみ、BoFと色の組み合わせ、SPMと色の組み合わせの3種類の類似度での結果を比較すると、BoFと色の組み合わせか、SPMと色の組み合わせを特徴として用いた場合に最良の識別率が得られることが分かった。

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ガウス整数と素因数分解について

横田有里

ガウス整数論は整数論を複素数まで拡張したものである.ガウス整数とは実部と虚部が共に整数の特殊な複素数のことであり,1801年にガウスによって発表された. ガウス整数にまで視野を広げることで素因数分解の一意性における重要性とその証明の必要性がガウスによって明らかにされた.このようにガウス整数の性質を詳細に解析することで数論という分野が生まれた.ガウス整数論において,特に有理素数とガウス整数の素数についての関係性は興味あることである.本論文ではガウス整数についての基本概念を確認し,関連する性質や定理を具体例も含めて紹介する.

ガウス整数が主役となるため,区別の為に通常の整数は有理整数と呼ぶ.ガウス整数は,和・差・積の演算については閉じている.また,有理整数同様にガウス整数においても単数という概念が理解される.すべてのガウス整数の約数となるガウス整数を単数,ガウス整数における単数は,1,-1,i,-iの4個が存在する.さらに,有理整数環における通常の用語と同様に,ガウス整数環においても倍数などの整除性に関する用語が定義される.ノルムが1より大きいガウス整数は,単数とそれ自身の同伴数以外の約数をもたないときガウス素数と呼ぶ.このとき有理整数と同様に素因数分解ができ,単数を用いてよいならば二つ以上のガウス整数の積として表せる.同様にガウス整数においても素因数分解の一意性が成り立つ.有理素数の中にはガウス素数でも素数であるものと合成数であるものがある.ガウス素数は,ノルムが2であるもの,4m+3型の有理素数とその同伴数,ノルムが4m+1型の有理素数であるガウス整数の三つに場合分けされる.さらに,ガウス整数を用いた素因数分解の具体例をいくつか示した.

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Raspberry Pi を用いた3Dスキャナ

小西自然

本研究では、小学校の教育現場における情報機器の活用を想定し、できるだけ安価でなおかつ子どもたちが興味を持ちやすいシステムとして、Raspberry Pi を用いた3Dスキャナの作成を行った。

Raspberry Piは5000円程度の非常に安価なコンピュータであり、近年子どもたちに人気のあるMinecraftというサンドボックスゲームの専用版が搭載されている。その大きな特徴がPythonのプログラムによりブロックの設置を制御できる点であり、これを利用して現実世界の物体を撮影し、Minecraftの世界に自動で出力するのが本システムである。

物体の撮影にはRaspberry Pi専用のカメラに加え、一定の角度ずつ軸を回転させることができるステッピングモーターを回転台として使用する。物体を側面から見た画像を一定角ずつ撮影し、それをもとに3Dデータを作成し、Minecraft上に出力するため、大まかな形は再現することができるが、コップのように中がくりぬかれている物体は苦手である。

一度スキャンした物体のデータはCSVファイル形式で保存されるため、何度でもMinecraft上に再現できる。そして、立体を出力する座標を指定でき、一つの世界に複数の立体を出力することもできるため、立体同士を組み合わせて新しい物体を作成したり、児童が作成した立体を児童同士で共有したりするといった使い方ができる。

また、ユーザはMinecraftの世界を自由に動き回れるほか、作成した立体を様々な角度から見る・さわる・壊すといった現実世界ではできないような疑似体験が可能である。

まだまだ発展途上ではあるが、1台のRaspberry Piですべての処理を行うため、比較的安価に3Dスキャナを実現でき、金銭的な制約のある教育現場においても導入しやすいシステムであるといえる。

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Last Modified: Saturday, 18-Mar-2017 16:23:51 JST