京都駅前セミナー

〜非線形現象の数理を考える〜

 

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◎第48回

日時: 平成25年 1月23日(水) 14時半〜17時半
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

高畠 芙弥(京都大学・大学院理学研究科)

時間

14:30〜15:30

題目

化学的界面不安定性が引き起こす自己推進運動

概要

エネルギーや物質の流れのある非平衡開放系では、固体粒子や液滴、ゲルなどの自発的な運動が生じることが知られている[Y. Sumino & K. Yoshikawa, Chaos (2008)]mmからcmスケールのマクロな自発運動が引き起こされる現象として、マランゴニ効果と呼ばれる現象がある。マランゴニ効果とは、化学物質の濃度勾配や温度勾配などによって界面張力が空間的に不均一になる界面の不安定化現象であり、この時、界面張力差そのものや張力差が引き起こす対流によって物体の運動が駆動される。我々は、このような自己推進運動系において、規則運動が起こるメカニズムに着目して研究を行っている。本実験では、界面活性剤粒子を油滴の一部に吸着させたり[F. Takabatake, et al., JCP (2011)]、油滴を光によって局所加熱したりする事によって、マランゴニ効果による界面不安定性を観察した。これらの系において、液滴の規則的な自己推進運動が誘起されること、さらに幾何学的な形状やエネルギー流速などのパラメータを変化させることにより運動モードの分岐が起こることを実験的に見出したので、紹介する。

 

講演2

西田孝明(京都大学名誉教授)

時間

16:00〜17:30

題目

圧縮性粘性流体の熱対流問題の解析

概要

ここをご参照ください.

 

◎第47回

日時: 平成24年 11月30日(金) 14時〜17時半
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

野村泰伸(大阪大学・大学院基礎工学研究科・機能創成専攻)

時間

14:00〜15:30

題目

柔軟かつ安定なヒト立位姿勢の神経制御とその崩壊メカニズム

概要

ヒト静止立位姿勢の神経制御メカニズムの本質的特徴は,姿勢の柔軟性と安定性が同時にかつロバストに実現されている点にあると考えられる.身体運動の安定性は拮抗筋の同時収縮(co-contraction)によって決まるとする従来の生体運動制御理論の立場では,姿勢あるいは運動の柔軟性と安定性は互いに相反する性質であり,高い安定性を求めると姿勢や運動の柔軟性は低下する.近年,我々は,柔軟性を保ちながらも立位姿勢をロバストに安定化することができる神経制御メカニズムとして,静止立位姿勢の間欠制御モデル(intermittent control hypothesis) を提唱している.本講演では,これまで定説であった立位姿勢のスティッフネス制御(インピーダンス制御)仮説と新しい仮説である間欠制御に関して考察する.特に,1) 立位姿勢を維持するのに必要な力学的エネルギー消費量,2) 制御器のパラメータ変動に対するロバスト安定性,3) ヒト静止立位時の重心動揺に見られる「べき乗則」に従う変動特性の再現性(静止立位時の姿勢動揺の背後には倒立振子的身体力学系が示すホモクリニック軌道に隣接するカオス的なダイナミクスが関わっている可能性),4)パーキンソン病における立位姿勢の不安定化症状に関する臨床データの解析,および,5) ヒューマン・コンピュータインタフェイスを用いた足関節筋の筋電図で倒立振子を安定化する実時間仮想バランス課題における運動学習に関する考察などに基づき,ヒトの脳神経系は,機械力学的に不安定な立位姿勢を安定化する戦略として間欠制御を用いていること,および,パーキンソン病における姿勢の剛直化と不安定化は間欠制御の崩壊に起因する可能性を主張する.

 

講演2

立木佑弥 (九州大学システム生命科学府)

時間

16:00〜17:30

題目

植物-土壌相互作用の数理モデリング: 外来種侵入問題、群集多様性維持機構

概要

植物は常に土壌環境(生物的・非生物的環境)と相互作用している。特に土壌中の種特異的寄生菌との敵対的関係は外来種の侵入条件(Kliromonos 2002; Turnbull et al. 2010)や、群集の多様性およびそのパターン(Mangan et al. 2010)に大きな影響を与える事が示唆されている。この敵対関係は植物群集に負の頻度依存効果をもたらし、種の多様性を促進すると考えられる (Janzen-Connell 仮説 (JC仮説): Janzen 1970; Connell 1970)

 本講演では、植物とそれに寄生する種特異的な天敵(土壌微生物)との相互作用系について二種類の数理モデリングのアプローチを説明する。一つ目に、ある群集に侵入する外来種の侵入条件について差分方程式系を用いて解析する。土壌との負の相互作用によって、外来種の侵入が容易に起こることを示す。その後、土砂崩れや火災などの環境撹乱が外来種侵入に与える影響について考察する。  二つ目は土壌寄生菌の時空間動態を反応拡散方程式を用いて記述し、空間明示的な森林の群集動態モデルを用いて、植物-土壌相互作用が樹木の種多様性に与える影響について議論する。土壌寄生菌は樹木の芽生えに捕食寄生しながら拡散により分布域を広げていく。これにより実生密度の大きいところほど寄生菌の密度が高まるため実生死亡率が高くなり、実生密度の空間パターンが形成される。このモデルを用いて、土壌微生物の人口学的パラメータの違いが、地球規模での森林群集の多様性の違いをもたらし、森林群集の局所的空間分布のパターンをよく説明することを示す。

 

◎第46回

日時: 平成24年 10月19日(金) 14時〜17時半
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

荻原 俊子(城西大学 理学部)

時間

14:00〜15:30

題目

順序保存力学系と生物分子モーターモデルへの応用

概要

生物分子モーターとは、ATPの加水分解などで生じる化学エネルギーを力学エネルギーに変換し、細胞内で機械的な作動をするタンパク質のことである。分子モーターの働きによって、筋肉の収縮、鞭毛や繊毛の運動、神経軸策輸送や原形質流動などの細胞運動が起こり、細胞内では様々なイオン分子の輸送が行われることが実験で確認されている。講演では、このような分子モーターによる細胞内物質輸送を記述する反応拡散方程式系を取り上げ、平衡解あるいは時間周期解の存在やその漸近安定性について、順序保存力学系の理論を用いた解析を行う。既存の結果を統一的な視点から見通し良く論じることができるようになることを紹介するとともに、新たに得られた成果を報告する。

 

講演2

大塚 岳(群馬大学 大学院工学研究科)

時間

16:00〜17:30

題目

駆動力付き曲率流方程式における渦巻曲線の運動での束の安定性およびインアクティブペアにおける定常解の存在

概要

渦巻曲線の運動は一般には通常の等高線法で表現しえないが、曲面とらせん面の交点として渦巻曲線の運動を表現する

改良型の等高線法が提案されている。その定式化の中でらせん面を基にした被覆空間を導入すると曲線を境に"内側""外側"を定めることが可能となり、これら"内側"および"外側"集合の比較定理が証明される。この結果は曲線運動の一意性や挙動の研究へと応用されている。本講演ではその比較定理の応用として渦巻曲線の束の安定性と逆向きの渦巻曲線のペアにおける定常解の存在を示し、これらの結果から得られる解の挙動や正則性についての結果を紹介する。

 

◎第45回

日時: 平成24年 7月13日(金) 14時〜17時半
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

水口 毅(大阪府立大学 大学院工学研究科)

時間

14:00〜15:30

題目

不安定解の探査と役割・生物集団の構造

概要

前半は力学系の不安定解の探査と役割について紹介します。不安定解は、不安定であるがゆえに観測されにくいのですが、力学系の

研究においていくつか重要な役割を果たすことが知られています。本講演では主としてベイスン境界にある不安定解の役割と探査法について、特に系が対称性を有する場合を中心に解説します。後半は、様々な形で相互作用する生物個体集団に見られる構造とそれに対する数理的なアプローチについて報告します。

 

講演2

竹内一将(東京大学 大学院理学系研究科)

時間

16:00〜17:30

題目

ゆらぐ界面成長の普遍法則と「目で見る」ランダム行列理論の統計則

概要

界面成長が示す非平衡ゆらぎの普遍法則と、そのランダム行列理論との不思議な関係を紹介する。我々は、シャツにこぼしたコーヒーのしみや紙の燃焼の際に見られる界面成長と似た界面を液晶乱流で実現し、その凸凹具合を高精度測定した結果、凸凹のゆらぎがランダム行列の最大固有値分布にぴたりと一致することを発見した。これは実は界面成長の数理模型で近年厳密に導出された結果と一致し、単純な界面成長には揺らぎ分布(や他にも様々な物理量)が従う普遍法則が存在することを意味している。セミナーでは、Kardar-Parisi-Zhang(KPZ)普遍ク

ラスと呼ばれるこの界面ゆらぎについての実験結果をまとめ、背後にある非自明な数理や普遍性が様々な実験事実として浮かび上がる様をご覧いただきたい。

 

◎第44回

日時: 平成24年 6月15日(金) 14時〜17時半
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

菅 徹(東北大学大学院理学研究科)

時間

14:00〜15:30

題目

2次元円環領域におけるLiouville-Gel'fand方程式の解の分岐構造

概要

指数型非線形項を持つ半線形楕円型方程式(Liouville-Gel'fand方程式)を2次元円環領域において考察する。このとき、方程式の非球対称解が球対称解から分岐する形で現れるが、その(分岐図における)大域的な構造は詳細には決定されていない。本講演では、領域の内径を0に近づける特異極限を考え、そのとき現れる極限方程式を導出する。そして導出された極限方程式に対して非球対称解の分岐構造を決定する。

 

講演2

吉川 周二(愛媛大学大学院理工学研究科)

時間

16:00〜17:30

題目

形状記憶合金の等温Falk-Konopkaモデルの解の三次の漸近形

概要

形状記憶合金は、常温下で変形をさせてもお湯をかけるなどして温度を高めるとその形状を復元する合金である。この形状記憶の効果は、合金の格子構造の相転移によって生じることが知られている。歪みを秩序変数としてGinzburg-Landau理論を用いてこの相転移を表現したモデルが、Falkモデルと呼ばれる古典的な(1次元)形状記憶合金の数理モデルである。本講演では、Falkモデルを3次元に拡張したFalk-Konopkaモデルについて考察する。等温条件下でのFalk-Konopkaモデルを偏微分方程式で表現すると、4階の分散型方程式が導かれる。この方程式に弱い摩擦項を付与した方程式の初期値問題の解の漸近挙動を調べる。具体的には、解の三次の漸近形について紹介したい。なお本講演の内容は竹田寛志氏(福岡工業大学)との共同研究に基づくものである。

 

◎第43回

日時: 平成24年 5月25日(金) 14時〜17時半
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

物部 治徳 (明治大学研究・知財戦略機構研究推進員)

時間

14:00〜15:30

題目

細胞運動に関連する自由境界問題の球対称解の存在と挙動

概要

本発表では, 細胞運動に関連する放物型の自由境界問題を扱い, 球対称解の存在と挙動について考察する. 考察する問題の境界の運動は, 非局所項を持つ曲率流方程式によって支配されており, 時間大域解を構成するには, 境界の曲率と非局所項が適当なバランスを保つ必要がある. ここでは, 境界の挙動が制限される, ある正不変領域が存在することを確認し,時間大域解の存在とその挙動について考察する.

 

講演2

町田 昌彦 (日本原子力研究開発機構 システム計算科学センター)

時間

16:00〜17:30

題目

超伝導物理における研究の現状と展望(私的見地からのレビュー)

概要

超伝導物理の研究は、1986年に銅酸化物高温超伝導体が発見されて以来、その発現機構を解明すべく、理論及び実験上の進歩を間断なく進めてきたが、未だ にその完全解明には至っていない。しかし、機構そのものは、謎のままだが、周辺の物理では格段の進歩があった。本講演では、まず、そのいわゆる着実なる進 歩の部分を私的見地から概観したい。酸化物高温超伝導体の発見からおおよそ20年後、2008年に、今度は、鉄系高温超伝導体が発見され、新たなミステ リーが加わった。しかし、この物質についても、機構そのものは、謎のままだが、超伝導物理という分野には新たな物質群が加わり、新知見が積み上がり、新た な展望が開けている。また、2004年、フェルミ原子ガスの超強結合超流動が発見されたが、これは、本質的に超伝導と理論上、同等な系であり、且つ、固体 で実現する超伝導より遥かに制御性が高いことから、更に豊富な知見が積み上げられている。本講演では、この21世紀初めの大きな発展についても私的見地か ら概観し、今後の展望について議論したい。

 

◎第42回

日時: 平成24年 4月20日(金) 14時〜17時半
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

木下修一(明治大学先端数理科学インスティチュート(MIMS) 研究推進員)

時間

14:00〜15:30

題目

ネットワーク構造により異なるブーリアンダイナミクスのアトラクターの性質

概要

近年、遺伝子発現パターンを遺伝子ネットワーク上でのダイナミクスとみなし、細胞の特徴を理解しようという試みが増えている。そのようなモデル 研究の一つとして、ランダムブーリアンネットワークモデル(RBN)がある。RBNでは遺伝子がお互いの発現をランダムに調節している状況を想定し、遺伝 子の発現パターンは一様なランダムネットワーク上でのアトラクターとして表現される。一方、近年実際の遺伝子ネットワークは一様なネットワークというより むしろ揺らぎの大きい非一様なネットワーク構造を持つ事が分かってきた。そこで、我々は非一様なネットワーク構造がアトラクターの特徴に与える影響を明ら かにするため、数値計算により一様なランダムネットワーク上のRBNとスケーフルリーネットワーク上のRBNのアトラクターについて比較した。本講演では、RBNのレビューを中心に上記の結果について報告する。

 

講演2

時田 恵一郎(大阪大学サイバーメディアセンター)

時間

16:00〜17:30

題目

ランダム群集モデルの統計力学

概要

スピングラス(不純物磁性合金)などの統計物理学的研究を通じて,比較的少数種の素子が複雑な相互作用を介して示す新奇な巨視的現象の数理的理解が進んできた.一方,生態系,代謝系,遺伝子ネットワーク,免疫系,言語進化などの,生物「群集」においては,進化がもたらす素子自体の圧倒的な多様性と,それが生み出すより複雑な相互作用が,非生物系とは本質的に異なる非線形非平衡物理学上の問題を提示している.このような複雑性,多様性および安定性に関する研究の歴史的背景から始めて,ランダムな相互作用を仮定する群集のモデルに対する統計力学的解析と,最近実証研究が進んでいる種個体数分布などの,群集が示す巨視的パターンに関する理論予測について,最近の研究結果を報告する.