京都駅前セミナー

〜非線形現象の数理を考える〜

 

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◎第62回

日時: 平成26年 11月14日(金) 14時00分〜17時30分
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

田上 大助(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所)

時間

14:00〜15:30

題目

粘弾性流れの数理モデルと圧力安定化有限要素法

概要

人体における血液の流れや射出成型におけるプラススチックの流れなど, 粘弾性流れは理論的にも実用的にも重要な物理現象の一つであり, 様々な現実的な数理モデルに関する考察がまとめられている.

一方で数値計算に用いる計算手法の数理的正当化は進められているものの,用いる数理モデルがより一般の粘弾性流れを表現できないものである,応用上重要となる移動境界問題への対応が不十分である,などの問題点を含んでいる.このため,粘弾性流れ問題の計算手法について,より数学的正当化を進めていく必要がある.そこで数学的正当化の結果の一つとして, ある粘弾性流れ問題に対する圧力安定化有限要素法の最適誤差評価を紹介する.また,いくつかの粘弾性流れモデル ---Oldroyd-Bモデル, Giesekusモデル,およびPTTモデル--- を用いた場合に,数理モデルや計算手法の妥当性を検討するための標準的な検証問題として知られる急縮小管流れ問題における数値実験と物理実験の比較も紹介する.

 

講演2

太田 幸宏 (日本原子力研究開発機構)

時間

16:00〜17:30

題目

Low-energy effective theory of odd-parity fully-gapped topological superconductors

概要

Topological superconductors (TSC) attract a deal of attention in condensed-matter physics, owing to the mathematical curiosity and the application potential. Studying such notable materials is actively done now from both theoretical and experimental viewpoints. The characterization of a TSC is achieved by a topological invariant (e.g., the first Chern class and the Kane-Mele Z2 invariant). Apart from this characterization, the thermodynamical properties relies on a type of the gap function. The TSCs typically show unconventional behaviors, including Tc-reduction via non-magnetic impurities [2,3,4]. It suggests that the TSCs be effectively described by an unconventional superconducting model. However, in the typical model of TSCs, the pairing potential in the mean-field Hamiltonian is s-wave (i.e., conventional one). Therefore, it is worth asking why the unconventional behaviors occur in the presence of s-wave paring.
 In this paper, we derive the low-energy effective theory of typical 3D TSC model [1]. The technique is similar to deriving the relativistic corrections in the Schrödinger equation from the Dirac equation. We find that the effective gap functions have both p-wave and s-wave characters, and, at a leading order, the theory reduces into the p-wave description. Comparing the resultant theory with numerical calculations of impurity effects [2,3,4], we argue how our approach is insightful. Finally, we discuss an alternative effective approach for superconducting phenomena, the Ginzburg-Landau equation for the present model.
[1] S. Sasaki et al., Phys. Rev. Lett. 107, 217001(2011).
[2] Y. Nagai, Y. Ota, and M. Machida, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 094722 (2014)
[3] Y. Nagai, Y.Ota, and M. Machida, Phys. Rev. B 89, 214506 (2014).
[4] Y. Nagai, Y.Ota, and M. Machida, arXiv: 1407.1125

 

◎第61回

日時: 平成26年 10月24日(金) 14時00分〜17時30分
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

市川 正敏 (京都大学 大学院理学研究科)

時間

14:00〜15:30

題目

生き物らしく動く非平衡界面

概要

我々が目で見て感じる生き物らしさの最たるものは、その「うごき」である。生き物の様にうごく粒子や界面を、実験や数式として実現できれば、そのエッセンスを生き物のそれと現象論として比較する事が可能であろう。生物のうごきを構成している多様な分子を端から明らかにしていく研究だけでなく、うごきの面から必要な条件を絞り込んでいくことでミニマムな要件を導く研究も、うごきのメカニズムを明らかにする上で欠かせないアプローチである。我々は、その様なうごくモデル実験系を多数報告してきた。今回、アメーバのように蠢くモデル系を構築したので、これを報告する。また、細胞膜と相似の脂質二分子膜が見せるシンプルな非平衡揺らぎの実験なども、時間が許せば紹介したい。

 

講演2

中野 直人 (東北大学 原子分子材料科学高等研究機構)

時間

16:00〜17:30

題目

埋め込みによるスカラー時系列解析の函数解析的解釈

概要

遅延座標を用いた埋め込み理論によるスカラー時系列に対する解析は,Takens などの数学的な研究もあって,これまでさまざまな分野において成果をあげてきた.ただ,そこで用いられる遅延幅や埋め込む次元,高次元に埋め込んだあとの情報の効果的な取り出し方,得られる力学の定量性など,まだまだ明らかになっていない部分がある.これらの問いに対して,本発表では函数解析の理論によって得られた1つの答えを報告する.ここで用いる手法は遅延座標において埋め込んだ部分時系列に対する主成分分析である.時系列データによっては低自由度記述などの力学の抽出やノイズ除去が可能であり,その有効性は古典的なFredholm の積分作用素論が数学的に保証する.本発表では,理論だけでなく幾つかの時系列データに対して応用した結果の紹介も交えて議論したい.

 

◎第60回

日時: 平成26年 6月13日(金) 14時00分〜17時30分
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

吉田 夏海 (大阪市立大学 数学研究所)

時間

14:00〜15:30

題目

Global asymptotic stability of a multiwave pattern for the scalar conservation law with partially linearly degenerate flux and nonlinear viscosity

概要

We study the asymptotic behavior of solutions toward a multiwave pattern (rarefaction wave and viscous contact wave) of the Cauchy problem for one-dimensional viscous conservation law where the far field states are prescribed. Especially, we deal with the case when the flux function is convex or concave but linearly degenerate on some interval, and also the viscosity is a nonlinearly degenerate one. The most important thing for the proof is how to obtain the a priori energy estimates. 

 

講演2

上田 好寛 (神戸大学 大学院海事科学研究科)

時間

16:00〜17:30

題目

非対称な緩和項を持つ対称双曲型方程式系の消散構造の解析とその応用

概要

緩和項を持つ双曲型方程式系に関して、静田・川島(Hokkaido Math. J., 14 (1985)) によって導かれた安定性理論が有名であるが、近年その安定性理論が適用できないモデルが知られてきた。その代表的なモデルとして、梁の振動を記述するTimoshenko方程式系とプラズマ現象を記述するEuler-Maxwell方程式系が挙げられる。この二つの方程式系の持つ消散構造はこれまでの方程式系とは異なり、高周波域で極めて脆弱で、エネルギー評価の消散項部分や減衰評価において可微分性の損失を引き起こすことが知られている。そこで、今回はこの二つの研究を基に、より一般的な方程式系について解析を行い、安定性が成り立つための条件と対応する消散構造について着目し議論を進めていく。

 

◎第59回

日時: 平成26年 5月16日(金) 14時00分〜17時30分
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

川原田茜 (広島大学 大学院理学研究科)

時間

14:00〜15:30

題目

実データに基づくセル・オートマトンの統計的構成

概要

 セル・オートマトンは全ての変数が離散値をとる離散力学系であり、局所的なセルの相互作用によって定義されたシンプルな規則からも複雑で多様な挙動を表現できるため、数理モデルとして重宝されている。しかし規則の単純さ故、実際の物理現象に対してそれを模倣するセル・オートマトンを構成することは一般的に容易ではなく、現象理解が充分になされた上でなければ構成することができなかった。本講演では、現象理解を仮定せずに様々な観測データから直接セル・オートマトンを構成した結果について紹介する。また偏微分方程式のデータから構成したセル・オートマトンと、超離散方程式との関連についても議論したい。尚、本講演は飯間信氏(広島大学)との共同研究に基づくものである。

 

講演2

平田祥人 (東京大学 生産技術研究所)

時間

16:00〜17:30

題目

リカレンスプロット:力学系の特徴づけと点過程・ ネットワークへの応用

概要

リカレンスプロットは、1987年にEckmann によって提案された、時系列データを視覚化するための平面図である。縦軸、横軸ともに同じ時間軸になっている。2つの時刻で状態が近 ければ対応する場所に点を打ち、そうでなければ点を打たないことによって定義される。リカレンスプロットは非常に簡単に使えるため、 その後、徐々に広い文脈で使われるようになってきている。決定論的な系のリカレンスプロットには、斜めの線分が特徴的に現れる。本講 演では、講演者が研究・開発してきたリカレンスプロットを使った手法を紹介するとともに、リカレンスプロットを点過程時系列データ や、時間とともに構造が変化するネットワークに対して応用する。

 

◎第58回

日時: 平成26年 4月25日(金) 14時00分〜17時30分
場所:キャンパスプラザ京都 6階第7講習室

講演1

福田弘和 (大阪府立大学 工学研究科 機械系専攻)

時間

14:00〜15:30

題目

細胞集団モデリングによる植物概日時計の外力応答の解明

概要

 植物を構成するほぼ全ての細胞が自律的な概日リズムを刻む振動子として振舞っている。このため、光パルスなどの外力に対する概日時計の応答は、振動子集団の応答としての議論が必要である。本セミナーでは、実験結果に基づいて植物個体を位相振動子集団としてモデル化し、システム全体の位相応答ならびに同期率の時間変化を議論する。実験としては、LUCレポーターを利用した時計遺伝子CCA1の発現計測によって得られる、個体レベルの概日リズムの位相応答と振幅応答、さらには根における高解像度の時空間パターンを取り扱う。個体レベルの概日リズムの研究では、システム全体の位相応答と振幅応答が細胞集団の結合強度や同期状態に大きく依存することが分かった。また、根における時空間パターンの研究では、時空間パターンの外力パルス刺激に対する応答から、細胞レベルの位相応答が推定できることが見出された。植物の概日時計の環境応答の理解ならびに農業的な利用においては、細胞集団モデリングによる外力応答の解明が必要であることを討論したい。

 

講演2

手老篤史 (九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所)

時間

16:00〜17:30

題目

生物の情報処理と行動制御の数理モデル

概要

単細胞から高等動物まで生物内部では様々な情報処理が行われ行動が決定される。例えば単細胞生物であるテトラヒメナを小さな容器内に入れ、充分な時間を経過させる。その後にテトラヒメナを広い空間に移動させると容器のサイズに見合った軌跡を描くことが北海道大学の中垣・國田らによって確認された。また、一般に人間の脳では聴覚由来の情報と視覚由来の情報が脳内の異なる部位に振り分けられ、保持されるといわれている。この現象に対して前頭葉におけるシータ波とアルファ波の倍振動数での位相差が重要な役割を示すことが山口(理研)・川崎(筑波大)らの実験によりわかってきた。本講演ではこのような様々な生物の実験結果に対して数理モデルを構築することにより、生物の自己組織化的な情報処理現象を説明する。また、時間が許せば、振動子を用いた粘菌の記憶実験や四脚動物の歩容遷移メカニズムについても説明したい。