受賞者と題名

各研究の概要

行列の行基本変形支援Webアプリケーション

池田政裕

線形代数における基本的な計算方法として行基本変形が挙げられる。連立一次方程式の解を行列で表現して求めるガウス・ジョルダンの消去法では、この行基本変形の操作が用いられている。ガウス・ジョルダンの消去法は至って単純な解法であるが、実際に一部の学生は計算ミスなどのケアレスミスのせいで、ガウス・ジョルダンの消去法の学習をスムーズに行えていないことが現状である。そこで本研究では、ガウス・ジョルダンの消去法に伴う計算をシステムにまかせて、直感的な操作で行基本変形が行えるようなWebアプリケーションを作成した。

本研究で作成したWebアプリケーションは、ユーザーが自分の取り扱いたい行列を設定し、ドラッグアンドドロップやダブルクリックなどのマウス操作でインタラクティブに行基本変形を行える機能が備わっている。また、このWebアプリケーションには練習問題が用意されており、ユーザーが問題を解答すると解答の正誤の結果を返してくれる機能が備わっている。

ユーザーが直感的に行基本変形を行えるWebアプリケーションを作成することができた。今後はガウス・ジョルダンの消去法の学習に役に立つWebアプリケーションとして、教員と学生間での使用を考えたときに、教員が問題を投稿し学生がその問題を解く機能、ユーザーがガウス・ジョルダンの消去法を正しい手順で行えたかを確認してくれる機能などを実装することが課題である。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

DEMモデルによるバンカーショットの解析

上田貴裕

本研究では、バンカーショットにおけるボールの軌道をDEMモデルによってシミュレーションし、a.ボールを直接打つ、b.ボール手前の砂を打つ場合の2種類で考え、その際サンドウェッジを振りぬく場合とサンドウェッジを振り抜かない場合をそれぞれ考えた。

DEMモデルでは、円状の粒子によってバンカー内の地面(砂粒)とボール、サンドウェッジを表現する。そして、ボールを表現する粒子を落下させ、地面を表現する粒子との衝突によってバンカー内にあるボールを表現する。そこにロフト角を変化させたサンドウェッジを表現する粒子を衝突させることによって、ボールの軌道を表現する。サンドウェッジ以外の粒子には一定重力が働き、運動方程式を用いて重力を適応させた。

結果としてa.での振りぬく場合では、バンカー内からでもボールの飛距離・軌道の高さはよく飛び、軌道も高くなった。また振りぬかない場合でも、ボールはしっかり飛んだが振りぬく場合よりは飛距離は落ち、軌道も低くなった。b.の場合での振りぬく場合では、飛距離・軌道の高さともにaのどちらの場合には、劣るもののバンカーからしっかりと打つことができた。また振りぬかない場合では、ロフト角に関係がなくボールに力がほとんど加わることがなくボールが飛ぶことができない様子が見られた。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

主虹と副虹の強度の比

木下香奈子

虹は,雨上がりや小雨のときによくみられる。空気中にある水滴は球状で,光を通すことができるので,その丸い水滴の中で光が反射しその光が集まり目の届くことで虹が見える。色によって波長が違い,強く反射する角度が違うので色がわかれて見える。そして水滴の中で1度だけ反射し一般的によく見ている虹のことを主虹と呼び,水滴の中で2度反射することで現れる虹のことを副虹と呼ぶ。副虹は主虹よりも色は薄く,肉眼では見えにくい。そして主虹との色の順番が真逆になっている。

この論文では,まず虹のできるメカニズムについて説明する。光の入射する角度や反射する角度を数式で表し,水滴中での光線の軌道を主虹と副虹についてそれぞれまとめた。光は水滴によっていろいろな角度に散乱されるが,特に強く散乱される角度がある。この角度は屈折率によって決まる。屈折率が光の波長によって違うので,結局,光の波長(色)によって水滴から強く反射される角度が異なり色がわかれて虹ができる。次に電磁気の法則から,屈折率の異なる2つの媒質の境界で,電場や磁場がどうつながっているかがわかる。この関係式から反射の法則や屈折の法則が出てくる。また,境界からの反射波や屈折波と入射波の振幅の関係も出てくる。これらの結果を用いて,水滴に入射する光と主虹や副虹を作る光の強度の比を計算した。

虹はただ単に太陽の光と水滴があるからではなく,入射角や反射角の関係や色の波長が深く関係していて虹が作られていることがわかった。そして,入射角や反射角の関係から反射した光が重なった部分の光が虹として現れることが分かった。主虹と副虹の強度の比を求めた結果,副虹は主虹の約4割の強さで現れる事が分かった。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

学習支援アプリケーション”♪ 統計の入り口 ♪”

國廣淳志

本研究では、2008年の中学校学習指導要領の改訂に伴い、中学校の指導内容として追加された「資料の散らばりと代表値」の内容に関して、 Webアプリケーションの開発を行った。なお、授業課題として、「テープの左端から10cmの長さだと思う地点でテープを切り、 その長さを測定する実験をしてみよう。また、グループ全員が測定したデータを基にして、表やグラフでまとめてみよう。」を設定した上で研究を行った。

本研究で開発した「学習支援アプリケーション“♪統計の入り口♪”」は、生徒専用画面と教員専用画面の2つから成り立っている。

生徒専用画面には、10cmのテープの長さを観察し、その長さを目安に画面上に表示されたテープを切断する画面や、 切断したテープを測定する画面がある。また、グループ全員の測定データを基に、度数分布表やヒストグラムを作成する画面がある。

テープを切断する画面では、「切る作業START」ボタンをクリックすることによって表示されるピンク色のテープ上で、 クリックやタップを行い、「切ってOK」ボタンをクリックすると、テープの切断を行うことができる。また、テープ上でドラッグを行うことによって、 テープを左右に動かすことができる。なお、テープの左上にある10個の円は、切断したテープの個数を示している。

度数分布表やヒストグラムを作成する画面では、データ一覧と度数分布表の度数欄に表示されている「+」ボタンを操作することによって、 度数分布表の作成が行えるようになっている。なお、ヒストグラムは、度数に合わせて自動で更新される。

教員専用画面には、担当クラスを登録する画面や、各生徒の進捗状況を確認する画面、10cmのテープの長さを設定する画面がある。

今後の課題として、度数分布表の階級幅やヒストグラムを各生徒の考えを組み込める形式にすることや、10cmのテープ長の自動設定化、 データ一覧と度数分布表、ヒストグラムの自動保存、自動共有などが挙げられる。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

量的形質の遺伝モデルの数理的考察

茶谷捷

インドクジャクの雄やフウチョウ類の雄などは雌に選択されようと、インドクジャクの場合は尾を長く、フウチョウ類の場合は羽の飾りが鮮やかになるように自らの形質を進化させてきた。一方で、雌は形質の進化した魅力的な雄を選択することで自分(雌)の遺伝子を後世に残すことができるので、より魅力的な形質を持つ雄を選択 するように雌の選択性(好み)は進化してきた。本研究では、この事実をもとに、雄の形質とその形質に対する雌の選択性(雌の好みという形質)がどのように進化していったのかを数理モデルを使って、数学的に解明することを目的とした。

本研究で、用いる数理モデルは連立微分方程式で表される量的形質の遺伝モデルである。まず、雄の形質と雌の選択性の2変数の場合の量的形質の遺伝モデルを使って、具体的な場面について考察した。その結果、雄の形質を壊す方向に突然変異が働くことによって、雄の形質と雌の選択性が進化することが分かった。

次に、雌雄共通の形質である一般生存力も考慮に入れた3変数の量的形質の遺伝モデルを使って、具体的な場面において、雌の選択性が進化するかどうかを考察した。その結果、突然変異が起こらない場合には、雌の選択性は進化しないが、先程と同様の突然変異が起こる場合には、雌の選択性が進化するかどうかを判定する条件がモデル方程式から導かれた。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

Kolakoski列とKolakoski周期列

仲野吉徳

不規則な数列を規則的に生成する方法がある。1つの例として、 Kolakoski列がある。一般に数列が与えられたときに同じ数の連続して並ぶ回数を数えることによって新しい数列を作ることをKolakoski変換という。Kolakoski変換で不変な数列をKolakoski列という。数列中に現れる数をアルファベットと呼ぶ。任意の2つの異なる自然数にたいしてをアル ファベットとするKoalakoski列が存在することは知られている。これをKolakoski(a,b)列と呼ぶ。特に2と1をアルファベットとするKolakoski列において2および1の出現頻度が極限値として確定するかどうかは未解決予想である。実験により、極限値は50%であることが予想されている。本研究ではKolakoski変換を複数回反復合成して元に戻る列を考えた。これをKolakokski周期列と呼ぶ。Kolakoski(a,b)4周期以下の周期列という数列を構成した。同様に、Kolakoski n 周期列を構成した。( n は任意 の値)またアルファベットの出現頻度を調べた。研究の結果Kolakoski(a,b)周期列はのとき出現頻度はそれぞれのアルファベットにたいして50%に近づくことを実験で示した。Kolakoski(3,1)周期列は置き 換え規則で表せる方法を示した。またKolakoski(3,1)周期列を、遷移行列A,Bの固有値、固有ベクトルを用いて、Kolakoski(3,1)周期列の3と1の出現頻度の極限を3次の無理数として正確に求めることができた。また4周期以下の遷移行列の置き換え規則から成り立つパターンを示した。加えて、Kolakoski(3,1)周期列は周期によって3と1の出現頻度は周期に依存することが推測されることを確かめた。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

Nagel-Schreckenbergモデルによる交通流解析

山口智規

セルオートマトンとは、格子状に配置された有限個の状態をとるセルからなる数理モデルである。あらかじめ定められたルールを適用すると、離散的な時間の経過とともに、内部の状態が変化していく。内部の状態をそのまま粒子の有無と見ることができるため、難しい数式を必要とせず、直感的に理解しやすい。 粒子の動きを単純化するによって簡単にルール設定できるため、社会現象のモデルに適している。本研究では、信号機が交通流に対してどのような影響を与えているのかを、Nagel-Schreckenbergモデルを用いて解析した。まず信号機を1台設置し、基本図を作成した。その結果、ランダムブレーキ効果の確率を大きくすることによって流量が減少することが分かった。また、信号機を取り付けることによって、流量が半減することを確認することができた。さらに、1周にかかる時間が、信号機なしに比べて大きくなることも分かった。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS

Can you hear the shape of a drum?

山村早希奈

形は異なるのに同じ音が鳴るか?という問題を考える。「音」とは太鼓の固有振動数のことで音色は考えない。数学的には−Δ(Δはラプラシアン)の固有値が一致することがあるか?という問題である。 

そのような例は実際に存在する。「折り紙操作(1)」のSとTである。

太鼓SとTから同じ音が出ることを証明しよう。

  1. Sの形の紙を3枚うまく貼ると折り直してTの形の3枚重ねが作れる。(「折り紙操作(1)」図2、「折り紙操作(2)」)
  2. S上のなめらかで周囲で0となる関数を7つの領域A〜Gに分割し、3枚重ねて「折り紙操作(2)」」のように組み直す。なお、Aは図形Aの裏で、「-」はその図形上の関数を「-1倍する」ことを表している。
  3. このように組みかえて得られるT上の関数はなめらかで周囲で0になっていることが示せる。
  4. S上の−Δの固有値に属する固有関数をこのルールで組みかえると、それが恒等的に0でなければT上の同じ固有値に属する固有関数である。
  5. この組みかえ写像のカーネルが0のみであることが示せる。(「移植のカーネル」14次元連立1次方程式のカーネル)
  6. よってS上の−Δの固有値はT上の−Δの固有値であり、逆も成り立つ。

固有値も固有関数も計算しないのに太鼓SとTが同じ音で鳴ることを証明できた。

Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS Highslide JS 数理情報学科トップ
Last Modified: Saturday, 18-Mar-2017 16:23:20 JST